取材・文/ふじのあやこ
昭和、平成、令和と時代が移り変わるのと同様に、家族のかたちも大家族から核家族へと変化してきている。本連載では、親との家族関係を経て、自分が家族を持つようになって感じたこと、親について思うことを語ってもらい、今の家族のかたちに迫る。
*
夏休み明けの前後では若者の自殺が増加する傾向があるとして、文部科学省、厚生労働省、こども家庭庁などが連携して自殺防止に向けた取り組みを強化している。日本財団が実施した「第5回自殺意識全国調査」報告(調査期間2022年11月10日~2022年11月18日、有効回答数:全都道府県の18歳~29歳の男女14819件)によると、2人に1人が希死念慮経験を持ったことがあり、5人に1人は自殺未遂・自殺準備の経験があると回答した。
今回お話を伺った、芽依さん(仮名・35歳)もいじめから自殺念慮を持った経験を持つ。
小学校でいじめていた子に中学でいじめられた
芽依さんは奈良県出身で、両親と3歳上に姉のいる4人家族。共働きの両親から放任気味に育った。家では学校で起こったことを母親へ報告していたが、その内容は実際とはまったく異なったものだったという。
「父親はいつも遅くに帰って来て、週末はずっと寝ているような仕事人間で、母親も私が小学校のときに仕事に復帰して、そこからは姉と一緒に冷蔵庫に入っていた晩御飯を電子レンジで温めて食べるという毎日でした。
母親は夜に家事をしていて、そのときに私は家事を手伝いながら学校で起こったことなどの報告をしていたんですが、ほとんどが嘘でした。小学校のときに私はいじめっ子で、後にいじめられっ子になった。どちらも親に知られたくなかったから、何も伝えていませんでした」
小学校の頃のいじめはそのいじめを受けた子どもの母親から芽依さんの母親へ伝えられバレてしまった。しかし、いじめが全く逆の立場になったときには芽依さんはそれを母親に伝えることができなかったという。
「因果応報なんです。小学校でいじめていた子に逆にいじめられたんですから。その子に対して私がやったいじめは無視と仲間外れなんですが、中学ではより酷いことをされていました。でも、私のせいですからね。
バレてしまったことで、私のせいで母親はママ友を1人失くす結果になってしまいました。いじめた側だったことがバレたときは母親からこってり怒られました。その子と親にも謝罪に行きましたが、許されたわけでもない状態で終わりました。でも、その子から逆にいじめられていることは相手の親は知りません。バレた後も私から母親に黙っていてほしいと伝えました」
【マンションの最上階の柵に座り、「勇気が湧いたら飛び降りようと思っていた」。次ページに続きます】