大学の履修登録も母親・宣子さんが行っていた

小学校と中学校は、積極的に学校と関わっていたという。

「私立ののんびりした学校に入れ、他の親御さんも教育熱心な人が多く、学校と保護者の交流も密だったんです。さすがに一緒に登校するのは難しいのですが、週に2~3回、PTAで学校に行っては、息子の様子を見ていました。息子をいじめる子がいたら、先生に報告していたし、息子の授業の様子なども見ていたんです」

息子はときどき、不登校になりながらも、宣子さんの支えもあって高校、大学とエスカレーターで進む。母親がなんでも要望を叶えてくれるから、一切の反抗期はなかったという。

「なかなかのイケメンちゃんで、渋谷を歩いているときに、読者モデルの声がかかったこともあったのよ。私も“彼女ですか?”とか言われちゃって。何を着ても似合うから、一緒にお買い物に行くのも楽しくて」

当時はスニーカーブームだ。聞くと、息子に言われるままに、何万円ものスニーカーや、1枚一万円以上するTシャツなども買い与えていたという。陰に日向にサポートした結果、大学の履修登録までしたというから驚きだ。

「どこが必修だとか教職課程だとか、あんな複雑なことはウチの息子には絶対にできない。それに、レポートや授業態度が厳しい先生の授業を受けて、息子のやる気がなくなったら困る。私がいろいろ調べて、一番息子に向いている、楽に卒業できる科目を選んだんです」

大学卒業後の息子は、宣子さんの親が経営する不動産管理会社に入る。息子は父親の下で働くことになったのかと聞くと、「もう、その頃には私も離婚していたんです。主人は別の女性と結婚することになり、そこに娘もついて行っちゃったんです」という。

ここまで息子に手をかけていたら、長女どころか、夫もほったらかしにされる。人間関係は与え・受け取ることで成立している。親子であれ愛情の応酬がなければ維持は難しい。

「主人には女性もいましたので、いいんです。ただ、娘が女性のほうに懐いていたのはショックでしたね」

離婚は宣子さんが42歳、息子は12歳、娘は17歳のときだった。娘から「ママは私が生理が来ても知らんぷりしていた。マリちゃん(夫の再婚相手)が手当てしてくれたんだよ」と言われて、悪いことをしたと思った。それから28年間、元夫も娘とも連絡を取っていないという。宣子さんにとって、息子は命そのものなのだ。

【父親は“二代目のボンボン”。財産を食いつぶしていた……後編へと続きます】

取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)などに寄稿している。

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