夫婦生活で苦痛に歪む夫の顔
結婚して3年経っても夫婦生活は一度もなし。義母からさりげなく孫について聞かれる機会も増え、そのことをメインに、夫婦の話し合いの機会を持ったという。
「表向きには、子どもについての話し合いです。レスについては面と向かって話す勇気がなかったので、義母の催促もあるし、私も30歳を超えていて子どもが欲しいという話をしました。そしたら、夫から『いつかは欲しいと思っていた』と遠い未来の話みたいな言い方をされて、イラっとしましたね。お互い30歳でタイミングは今ということを伝えて、そこから月に期間を決めて夫婦生活を持つことを決めました」
タイミングは妊娠しやすい期間に毎日が望ましいことも理解していたが、1日置きの2回と回数も決めて行なった。最初こそ夫は何も言わずに協力してくれていたが、4度目のタイミングあたりから「減らしてほしい」と訴えるようになり、7度目には「(行為は)愛情を感じられるものではなくなった」と恵理子さんはいう。
「最初のほうはまだ愛情を感じられるものでした。でも、『減らしてほしい』と言われてから、時々夫の顔が歪むのを感じていました。苦痛なんだろうなって。後半になると、本当に妊娠するための手段となっていました。
その行為を3年ほど続けたのですが、妊娠せずに私から『夫婦だけで楽しく生きていけたらいいね』と伝えて、終わりました」
今も夫婦は、表面上は仲良く暮らしている。数年前に引っ越しをして、そのときに2人の寝室を別々にしたという。恵美子さんに離婚の意志はない。その理由について「レスで別れるのって、結局は他に別の異性を求めているということですよね。今相手がいないにしても、将来的にはそれを望んでいるということ。私たち夫婦にはそれがないんだと思います。女性として見られたいという願望が、この安定した生活をなくしたくない思いより強くなることはないです」
冒頭のアンケート調査では、「配偶者とのセックスレスを悩んでいるか?」の問いに、「悩んでいる」のは男性47.3%、女性51.5%となり、「悩んでいない」と回答したのは男性52.7%、女性48.5%となった。20代の夫婦でもおおよそ半分の夫婦は悩んでいないのである。セックスレスは離婚事由になるが、離婚しないことを選択した夫婦も多い。セックスレス夫婦の数は想像よりもずっと多いことが予想される。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。