母親のマイルール“太っている人は自己管理できない”
兄がいなくなったことで少しショックを受けていたのか、母親はおとなしくなったという。そんな母親と父親の仲は良好で、そこから両親は夫婦の時間を楽しむようになっていった。
「私の父親はとても温厚な人なんです。怒ったところを一度も見たことがなくて、小さい頃に覚えている夫婦ゲンカの姿も母親が一方的に父親に怒りをぶつけているという感じでした。
その母親の怒りも兄のことがショックだったのかおとなしくなっていき、そこから私から見ても夫婦仲がとても良くなったんです。元々、母親は子どもに過干渉ではなく、自分のルール以外のことをされると極端に嫌がるだけなんですよね。その頃には私も大学に入って家族との時間よりも友人や彼氏との時間を優先するようになって、一緒に暮らしているけど母親とはあまり言葉を交わさなくなっていました」
それでも、母親の性格が変わったわけではなかった。周囲だけでなく、自分自身にも完璧なルールを強いていた母親は太っている人が大嫌いだった。ややふくよかな体型をしていた奈々さんの彼氏を忌み嫌っていたという。
「母親は太っている人を自己管理ができない人という見方をする人で、すごく見下すところがありました。私が高校生のときに少し太ってしまったときには頼んでいないのに家のご飯がダイエットメニューになったことがあるほど、家族が太ることも許しませんでした。
そんな私が連れて来た彼氏が母の気に障るほど太っていたのか、許せなかったようでした」
母親は奈々さんの彼が帰った後にはフローリングの拭き掃除をするなど、あからさまに不潔扱いをしてきた。それでも彼の目の前で何もしなかっただけマシだと奈々さんは振り返る。
「彼本人の前でする勇気はないんですよ。でも、私の前では彼が通ったところのフローリングだけを拭き掃除したり、『影響を受けて肥えないでよ』と言ってきたり。その人が私の夫になったことも、母親からすると信じられないんでしょうね」
奈々さんとその彼はそのまま付き合いが続き、結婚。親族になると母親の性格が夫を苦しめるようになり、奈々さん夫婦と母親は距離を置くことになったが……。【~その2~に続きます】
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。