取材・文/ふじのあやこ
昭和、平成、令和と時代が移り変わるのと同様に、家族のかたちも大家族から核家族へと変化してきている。本連載では、親との家族関係を経て、自分が家族を持つようになって感じたこと、親について、そして子供について思うことを語ってもらい、今の家族のかたちに迫る。
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ベビカム株式会社は「親の介護に関する意識調査」を実施(実施日:2023年1月26日~2月18日、有効サンプル数:137)。子どもを持つ主婦の6割近くが、親の介護に対して不安を持ちつつも、介護について親と話をしたことがないという結果になった。
今回お話を伺った、奈々さん(仮名・44歳)も親の介護に不安を感じている1人。今はまだ元気に一人暮らしをしている母親だが、年々母親にとられる時間が増えており、「母親は自分のルールだけに従って生きてきた人。周囲に誰もいなくなって、私しか頼れる人がいないんです」と語る。【~その1~はコチラ】
孫はしっかり管理しないと太ってしまう
奈々さんは大学の同級生だった男性と26歳のときに結婚。母親は娘の夫となった人をずっと忌み嫌っていた。その理由は、太っていたから。
「母親は“太っている人は自己管理ができない人”という曲がった見方をする人でした。彼は学生のときから少しふくよかで、実家には数回来たことがあったのですが、母親とは挨拶を交わしたくらいでした。
お互い社会人となってからも付き合いは続き、結婚しようとなったときに彼から『お義母さんに嫌われているから大丈夫かな』と心配していました……。母親は彼に直接何かを言ったわけではなかったけれど、やっぱり母親の雰囲気などでよく思われていないのは伝わっていたみたい。申し訳ない気持ちになりましたね」
そんな母親だったが、結婚に反対することはなく、結婚式にも笑顔で参加してくれた。その後の奈々さん夫婦と両親との関係は良好だったが、奈々さんに子どもができたことで、母親の孫かわいがりの言葉が夫を直接苦しめていったという。
「母親は私に対して過干渉というわけではなかったし、両親の仲は良好で2人で旅行に行くなど、私が家を出て2人暮らしになってからはより夫婦での時間を楽しんでいるようでした。私たち夫婦は実家から電車で40分ぐらいの距離で暮らしていたのですが、特に行き来もありませんでした。
それが変わったのが、私たち夫婦に子どもができてから。母親は私たちの子ども、母にとっては孫をとてもかわいがってくれました。問題はそのかわいがり方。夫の前で『太る遺伝子が入っているからちゃんと食事管理しないと』とか、『子どもの記憶が残る頃にはそのだらしない姿は何とかしないとね』と忠告してくるようになりました。夫は苦笑いでやり過ごしていましたが、私に『お義母さんが頻繁に来るので、家での時間が苦痛でしかない』と訴えてきました。だから、私は母と距離を置こうと決めたんです」
【誰も頼れない状況に一番苦しむのは、母親ではなく子ども。次ページに続きます】