自分の経験を元に、嫌だったことは絶対にしない
楓さんは無事女の子を出産するも、3人での生活は2年と続かなかった。離婚理由について、「上手に甘えることができなかった」と振り返る。
「甘える自分なんて想像するだけで気持ち悪くて、できませんでした。それなのに、協力的じゃない夫に対して、察してほしいと色んなことを暗に求めてしまう。今なら、破綻して当然だったと思います。
私は、母親のようになりたくなかったんです。男性で失敗したくなかったのに……」
現在、楓さんは母親と子どもの3人暮らしをしている。離婚している家庭も昔と比べて増えている影響で学校側もひとり親に対して配慮をしてくれるようになっているというが、「子どもの本心はわからない」と楓さんはいう。
「子どもを父親を知らない子にしたくなかったのに、結局は同じ道になってしまって、子どもには申し訳ない気持ちでいっぱいです。子どもは今小学生なのですが楽しく学校に行ってくれてはいるんですけど、私も小さいころは周囲の目のほうを気にして、親にそのことをバレないように努めていましたから、本心はわかりません。でも、あのとき嬉しかったように絶対に食事は作るようにしていますし、母親の協力もあるので子どもとの時間はとるようにしています。
そして、男性との関係は一切ありません。私があのとき嫌だったこともしないように頑張っています」
日本の母子世帯の就業率は86.3%(令和3 全国ひとり親世帯等調査)と世界的に高い水準にある。楓さんは一時結婚出産のために職を離れたが、人事部でコミュニケーションスキルの大切さを知り、心理系の資格を取得。今ではフリーで仕事を複数抱えているが、そんなひとり親ばかりではないのが現実。ひとり親世帯の貧困率を国際比較すると、日本はOECD加盟国中ワースト2位(35か国中34位、OECD Family database)となっている。ひとり親世帯は非正規やパート雇用が多いからだという。貧困に陥ることなく子育てをできる仕組みが求められている。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。