聞きたいことは山ほどあるけど、どうしても聞けない
じつはつい最近、もう一度引き出しを開けてみたという。すると、前回無造作に入っていたペン類がちゃんと整理され、5枚の写真は丁寧に重ねて表向きに置かれていたそうだ。
このときは身震いがしたという。
「怖いでしょう? 僕が開けて見たこと、バレているのかもしれませんよね。それでも何も言わないのはなぜなんだ? ああ、気付かなければよかった!」
以来、妻の顔色を伺うようになってしまったという高橋さん。在宅ワークが長引くなか、なんとなく居心地が悪いのも理解できる。
「コンサルなので、セミナーも顧客との打ち合わせも、とりあえずはWEB会議である程度できちゃうんです。またそれができないと仕事にならない。でも、早く通勤したり、出張に行きたいですよ」
おどけて話す高橋さんは、妻とのやりとりを楽しんでいるようにも見える。本当に後ろめたい気持ちがないからだろう。
「家で目が合うと、妻が『なあに?』って言うんですよ。聞きたいことは山ほどあるけど、『ううん、別に』としか言えません。誰かベストな解決法を教えてもらえませんかね」(笑)
今、生活様式の見直しが求められ、誰もが自宅の片づけに着目している。
将来の夫婦間の禍根をいくらかでも軽減するためには、このチャンスに始末しておくべきものを処分したほうがいいかもしれない。
取材・文/大津恭子
出版社勤務を経て、フリーエディター&ライターに。健康・医療に関する記事をメインに、ライフスタイルに関する企画の編集・執筆を多く手がける。著書『オランダ式簡素で豊かな生活の極意』ほか。