取材・文/大津恭子

【夫婦の距離】妻孝行のつもりは夫だけ。「旅行は女友達と」が妻の本音~その2~

定年退職を間近に控えた世代、リタイア後の新生活を始めた世代の夫婦が直面する、環境や生活リズムの変化。ライフスタイルが変わると、どんな問題が起こるのか。また、夫婦の距離感やバランスをどのように保ち、過ごしているのかを語ってもらいます。

~その1~はコチラ】

[お話を伺った人]

倉田洋二さん(仮名・60歳)57歳で長年勤めた商社を早期退社。その後、元同僚が経営するコンサルティング会社の顧問として、週に2日だけ出勤するセミリタイア生活を送っている。
倉田さとみさん(仮名・60歳)25歳で結婚・出産後、子育てに専念。40歳のときに医療事務の資格を取得。以後、大学病院でパート勤めを続けている。

妻はなぜ、自分との旅行を「3年に1度で十分」と吐き捨てたのか

妻が時折口にしていた「旅行がしたい」という願望。夫は自身の退職を機に、その夢をこれから叶えていこうと決意していた。しかし、いざ旅行に誘うと、妻は乗り気ではない。

長年にわたる家族サービス不足は、洋二さん自身も自覚していた。

「ウチはいわゆる“できちゃった婚”なので、20代で結婚してからふたりで旅行に出かけたことは少ないんです。家族旅行はよく覚えていますよ。すごい剣幕で怒ってましたからね。ちょうど子育てに疲れていた時期だったんでしょう。だから、僕が全面的に謝って一件落着したはずですよ」

今まで妻に労いの言葉をかけてこなかった分、これからは妻が望むことを数多く実現してあげたいという気持ちがあるようだ。

「僕はダンナとしては不合格でしょうね。理想的な父親でもなかった。入社以来、関わっていた事業がどんどん規模を拡大していって本当に目まぐるしい毎日でしたし、出張もやたらめったら多かった。連日の飲み会も当たり前の時代でしたからね。言い訳に聞こえるかもしれないけど、土日も接待ゴルフやら何やらで、家族サービスをしているヒマなんてなかった。中には教育熱心で子供中心の生活をしていたヤツもいたけど、僕はなかなか……。ひとりになれるのは休日の朝、釣り糸を垂れている時間だけでした」

洋二さんが会社に入社したのは1982年。まさに日本がバブル期に突入していく時期と重なる。20~30代は商社マンとして多忙を極め、40~50代は管理職として身を粉にして働いてきたのだろう。

「女房も、僕が家庭人として機能することはあきらめていたんじゃないかな。子供が小さい頃はよく喧嘩もしましたけど、途中から期待されている感じもなかったです(笑)。子供の学校行事はもちろん、親戚付き合いも一切合切、女房ひとりで乗り切ってきましたからね。今考えると、そんな中で資格を取ったりして、なかなか根性があるというか、頼もしい女なんですよ」(洋二さん)

だからこそ、セミリタイアして時間の融通が利くようになった今、妻孝行をしたくなったようなのだが、妻自身の気持ちとの間には、すでに大きな隔たりができていた。

妻の「旅行に出かけたい」発言には、行間に隠された意味合いがあった。

【夫が気づかない、さとみさんの真意とは? 次ページに続きます】

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