取材・文/大津恭子

写真はイメージです

定年退職を間近に控えた世代、リタイア後の新生活を始めた世代の夫婦が直面する、環境や生活リズムの変化。ライフスタイルが変わると、どんな問題が起こるのか。また、夫婦の距離感やバランスをどのように保ち、過ごしているのかを語ってもらいます。

[お話を伺った人]

高橋健二さん(仮名・58歳)経営コンサルタント。大手コンサルタント会社を39歳で退職し、独立。ASEAN諸国への通信販売の販路開拓を画策する企業のシステムづくりを支援している。

妻の引き出しの中から出てきた古い写真に絶句

東京・新宿区に個人事務所を構える高橋健二さん(以下、高橋さん)は、5月に入った現在も極力自宅で仕事をこなすようにしているが、「ちょっと家に居づらいんですよね」とこぼす。

コロナ禍によって自粛生活が長引き、夫婦や家族間で苛立ちが募って喧嘩が絶えず、居心地が悪い……のではない。大学生のひとり息子は地方で暮らしているため現在妻とふたり暮らしだが、寝室の一角にワーキングスペースを確保して仕事をしているので、日中それほど頻繁に顔を合わせることはない。食事中や夕食後に会話をするなど、関わり方はこれまでとあまり変わらないという。

「妻は(健二さんの存在が)うるさいと思っているかもしれませんが、不思議なくらい、今までと何も変わりませんね。でも、僕にとってはそれが怖いというか……複雑なんですよ」

高橋さんの複雑な心境を、順に紐解いてみよう。

自粛生活中、自宅の片づけに勤しんだ人はかなり多いようだ。

高橋さんも同様で、昨年、事務所から持ち帰った大量の資料の置き場所を確保するため、十数年ぶりに押し入れや納戸の整理をした。

着られなくなった衣服、古いテニスラケット、時代遅れのノートパソコン、シミの付いた毛布……。粗大ゴミを出し、45Lのゴミ袋10個分ほどのモノを処理し、ついでに気になっていた風呂のカビ取りまで行い、晴れやかな気分になったそうだ。

しかし、納戸の奥にある整理棚の引き出しを開けたことが、高橋さんを窮地に追い込んだ。

【思い出の写真もしばらく捨てることができなかった次ページに続きます】

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