外国為替市場は、変動相場制のため相場は刻々と変動しています。基本的には、通貨の需要と供給のバランスが為替の動きに影響を与えていますが、2022年のように急激に円安に動いた理由はなんだったのでしょうか? 今回は、円安になる理由や、円安が続くとどうなるのかについて解説していきます。
100歳社会を笑顔で過ごすためのライフプラン、ライフブック(R)(https://www.smilelife-project.com/)を提唱する、ファイナンシャルプランナー・藤原未来がわかりやすく解説します。
目次
円安になる理由とは?
円安が続くとどうなる?
円安に歯止めをかけるには?
まとめ
円安になる理由とは?
円安が進む要因の一つとして、金利差があげられます。金利は国によって違うため、一般的に金利の高い国の通貨が買われる傾向にあります。例えば、ドル円の為替相場で考えると、米国の金利が高くなり日本の金利が低くなれば、円を売ってドルを買う傾向が強くなります。2022年の例を見てみましょう。
<図表1 2022年の「ドル円相場」と「米国・日本の10年国債金利」>
図表1の赤文字で記載されている部分に注目してみましょう。2022年1月末に、ドル円相場は「1ドル=115.10円」でしたが、10月末には「1ドル=148.71円」と33.61円も円安となっています。
同時期の日米金利差は、1月末が1.614%、10月末には3.805%と2.191%も金利差が拡大しています。この結果を見ても、金利の低い円を売って金利の高いドルを買うという動きが大きくなり、円安ドル高となったことが容易に想像できます。
では、なぜ金利差が大きくなっていったのでしょうか? これは日本と米国でとられている金融政策が異なっていたことが原因のひとつとされます。
2022年は、米国では記録的な物価上昇となりました。この動きを抑えるためにFRB(米連邦準備制度理事会)は、段階的に政策金利の引き上げを行ってきました。一方で、日本では日銀(日本銀行)が金融緩和政策を維持するとして、政策金利の引き上げを行わなかったため、10年国債の日米金利差は拡大していくこととなりました。このように、2022年の円安は金利差の拡大が大きな要因と考えられるのです。
その他の理由
その他、主な要因としては以下のようなことがあげられます。
貿易赤字
2022年の日本の貿易収支は、過去最大の約20兆円の赤字となりました。簡単に言えば輸出より輸入が多く、外国のモノを買うために外国の通貨が必要で、円を売って外国の通貨を買うことの方が多いということになります。つまり円安が進むのです。
地域紛争や戦争
2022年は、ロシアのウクライナ侵攻で「有事のドル」と言われました。信用力の高いドルが買われたことで円安が進む要因となったのです。
円安が続くとどうなる?
円安は、輸出産業にとっては製品を売ることで、得た外貨をより多くの円に交換できることから有利に働きます。輸出企業の中には、2022年に最高益となった企業もあります。しかし、輸入産業にとっては、逆に円安がコストアップの要因となりデメリットの方が大きくなります。
<図表2 「円安・円高」の「輸出・輸入」への影響>
企業のコストアップは販売価格に転嫁されることにつながります。2022年から、多くの食品や電気・ガス・ガソリンなどの価格が高騰し生活に直接影響していますね。物価の上昇が全て円安の影響ではないとしても、食糧やエネルギーの多くを輸入に依存している日本にとって、急速な円安がマイナスの影響を与えているのは事実です。円安が続く状況では、さらに日本国内の物価上昇をまねくことになるでしょう。
円安により原材料等の輸入のコストが増加した企業が、生産拠点を海外に移すケースが増えるかもしれません。この場合、国内で生産する企業が減少する「経済の空洞化」が進んでしまうこととなります。国内の経済の空洞化が進むと、労働者の雇用環境が失われてしまいます。
雇用がなくなれば労働者の所得が減少しますので、消費にもマイナスの影響となるでしょう。国内企業の収益もマイナスの影響を受けることになります。
円安に歯止めをかけるには?
2022年から円安の影響により徐々に物価が上昇してきていますので、私たちの暮らしに大きな影響を与えています。円安に歯止めをかけるにはどのような対策があるのでしょうか?
為替介入
2022年9月に1ドル=145円台後半となった時点で、日銀は為替介入を行いました。日銀が保有しているドルを売って円を買うことで、一時1ドル=140円台前半まで、5円以上円高方向に動きました。
その後も10月には1ドル=150円台前半という約32年ぶりの円安水準となり、日銀は為替介入を繰り返したとみられています。
金利の引き上げ
日本では、長年にわたりゼロ金利やマイナス金利といった政策をとってきました。一方で、米国やEU諸国などは2022年には金利の引き上げを段階的に行っていったため、金利差の拡大につながりました。
日本も金利を引き上げることで、金利差を縮小できれば円安に歯止めをかけることが出来るでしょう。しかしながら、金利の引き上げは容易ではないため、今のところあまり期待はできません。
貿易収支の改善
海外への輸出を増やし日本の製品を買ってもらうことで、円の需要を増やしていくことも円安が進むことの歯止めになります。日本の技術力を高めて海外にアピールし、より多くの製品を買ってもらえるよう努力していくことが不可欠です。
まとめ
急激な円安はメリットとデメリットがあります。デメリットの中でも、急激な物価上昇は生活に大きな影響を与えています。なぜ円安が進んだのかを理解し、円安によるデメリットを解消するために、外国債券や外国株式などに投資する投資信託を活用した資産運用を取り入れることも、対策の一つとして検討すると良いでしょう。
資産運用や投資のアドバイスは、今や銀行などの金融機関の窓口でもさかんに行われています。同時に、インターネット上でもYouTubeやSNSを通じて色々な人がそれぞれの立場から投資術などを発信しています。しかし、それらのアドバイスは本当にあなた自身に適したものなのでしょうか?
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●取材協力/藤原未来(ふじわらみき)
株式会社SMILELIFE project 代表取締役、1級ファイナンシャルプランニング技能士。2017年9月株式会社SMILELIFE projectを設立。100歳社会の到来を前提とした個人向けトータルライフプランニングサービス「LIFEBOOK®サービス」をスタート。米国モデルをベースとした最先端のFPノウハウとアドバイザートレーニングプログラムを用い、金融・保険商品を販売しないコンサルティングフィーに特化した独立フランチャイズアドバイザー制度を確立することにより、「日本人の新しい働き方、新しい生き方」をプロデュースすることを事業の目的とする。
問い合わせ先:03-6403-5390(株式会社SMILELIFE project)
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