靴もつぎはぎ!? だからカッコいい!
チャールズ国王は、服のみならず靴も継ぎあてがされていることでも有名です。その靴の多くは、バッキンガム宮殿近くの「セントジェームス通り」にある『ジョンロブ』(1849年創業)の革靴が多いです。
その靴の何足かにも革の継ぎあてがされています。これもシャツと同様、丁寧に手入れされ、磨き上げられた靴だからこそ、紳士然とします。
私自身も、愛用の靴に革の継ぎあてをし、30年以上履いています。靴は、履き続けると、インソールが沈んでいき、靴が自分の足の形になるのです。そうなるほど、愛おしさを感じます。
靴のソール(底)には2種類あり、接着剤で着けたものと、糸で縫ったものがあります。私が愛用しているのは後者です。値段も高く、最初は硬くて歩きにくいですが、馴染んでくると履き心地がよくなるんです。
何よりソールを糸で縫った靴は、ソール(底)を交換出来ますので使い捨てでなくサスティナブルなのです。
注目の英国王室御用達「ロイヤルワラント制度」
英国では英国王室御用達ロイヤルワラント制度があります。これは、英国王室御用達だという「認定証」を指します。
これを授与できるのは、2023年1月現在チャールズ国王のみです。故エリザベス2世女王陛下の「ロイヤルアームズ」(商品にデザインできる英王室紋章)は無効になりますが、2年間の継続使用は認められています。
この「ロイヤルワラントアポイントメント(Royal Warrant of Appointment)」(王室へ商品・サービス提供するブランドが紋章使用を認める文書・以下ロイヤルワラント)の取得には、王室メンバーからの推薦を受けて、最低5年間、一定数の商品を納入していることが必須。
その後、英国の「ロイヤルワラント協会」から申請し、王室メンバーからの承認後、認定されます。認定後は製品はもちろん、広告、店舗にも「By Appointment」と明記でき、ロイヤルアームズも入れられます。
業種は多岐にわたり、スーツや靴はもちろん、紅茶やオートミールの生活必需品まで及びます。銀行、ホテル、メディアなどのサービスはロイヤルワラントは取得できません。それはこの制度が英国の職人の技術や魂を助成する目的があるからでしょう。
ロイヤルワラントは5年おきに更新され、商品の品質水準が満たなかったり、授かった当人の死去、会社の倒産、そして王室メンバーが実際に使用している商品を口外することで、認可取り消しに。そう考えると、長きにわたりロイヤルワラントを保持していくのは大変な難事業であることがわかります。ここに歴史を重んじる英国人気質を見るのは、私だけではないはずです。
この、ロイヤルワラントを授与する資格があるのは、現在、チャールズ国王お一人のみです。細かなチェック項目があるのですが、チャールズ国王は「環境に配慮した企業であること」を条項として加えました。
このロイヤルワラントは、エリザベス女王、エディンバラ公、チャールズ国王、エリザベス王太后等々が授与しており、私のような英国アイテムのヴィンテージコレクターの間では、紋章により商品の生産年度を推考する助けにもなっているのです。
古いものを長く愛し続ける。そのために、さまざまな文化や思いが継承されている。英国では、毎週末どこかで蚤の市のようなマーケットが開かれています。そこではピカピカなものよりも、古いもののほうが高かったりするのです。
日本も英国に負けず劣らず、伝統がある国です。エリザベス2世女王陛下の崩御、そしてチャールズ英国王の即位は、歴史や文化に対するリスペクトが高まりました。そして、若い世代を中心に、日本でも古いものを愛する文化が広がっていくのではないかと感じています。
●Sloane Ranger Tokyo オーナー 大西 慎哉
1965年生まれ 大学卒業後、レナウンに入社し、「アクアスキュータム」など英国ブランドを担当。2007年から「ハケットロンドン」日本支社立ち上げに参画。2020年に退社後、 テーラーサロン「Sloane Ranger Tokyo」を立ち上げる。 アパレル業界歴30年のファッション通で、「おしゃれ番長」の異名をとる。
Sloane Ranger Tokyo オーダースーツの他、20世紀初頭から現代までのヴィンテージスーツや英国の軍服、トップブランドのヴィンテージアイテムも扱う。紳士服の博物館的な要素も。展示品は購入もでき、ファッションアドバイスも行う。
住所:東京都中央区銀座1丁目9−8 奥野ビル 403
03-6263-2230 ※完全予約制
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