いつでも自由に頼れる存在ができたとき、妻は娘になった
実家に帰りたくない理由だった父親の存在がなくなり、そこから妻は頻繁に帰省するように。また、海斗さんと何かある度に義母に相談し、ケンカなどの場合には義母の家に立て籠もるようになったという。
「私と仲良くしているときも『お母さんの様子を見てくる』と言ってその日は帰ってこないようになりました。
それだけならまだしも、ケンカしたら話し合いの期間もなく、娘を連れて義母の家に行っては私の愚痴を言い続けます。義母がそれで私を叱るなどはないんですが、『歩み寄ってあげて』といった風のお願いをしてくるんです。正直、うざかったです」
さらに海斗さんを追いつめているのが、義母から聞かされる娘への不満。「直接ではなく間接的に伝えてこようとしている」と海斗さんは訴える。
「妻はこっちが不満などをひとこと言うと何倍にもなって返ってくるタイプです。それに今は感情的なところが顕著化してきてもいる。だから義母は直接ではなく、言いやすい私に対して言ってくるんです。『どうにかならないものかしらね~』という感じで、伝えてほしいと言われているわけではないのでスルーしてはいるんですが、邪見に扱うわけにもいかず、ストレスはたまる一方です。
義母が妻に強く言えずに私に言ってくるのは、新しい家の面倒も見てくれたり、義父と離れさせてくれたという恩があるからなのかと思っています。でも、それは私には関係ないですよね」
コロナ禍に入ったときには「県またぎはいけない」との理由で義母は京都に越してきてしまったという。さらに、妻からは遠くない未来に義母との同居を求められていると言い、「あなたには両親と弟までいる」との一点張りで聞く耳を持ってもらえていない。
「近くで暮らすところまでで十分でしょう、同居は勘弁してほしいです。同居なんて介護がいるようになったらの話で、施設に入ってもらうなどもあると思っていたのに……。
それに自分の両親ではなく、義母と同居なんて一切考えていなかった未来ですよ。娘はかわいいけれど、そのときにも一緒にいられる自信はありません」
男女関係なく、相手の親との同居を嫌がる人は多く、結婚相談所ではその部分を事前に確認して、同居希望の場合は候補から外しているという話もよく耳にする。
海斗さんの場合は、娘によって義母に吹き込まれた海斗さんの悪口に、そして海斗さんを言いやすい対象としている義母の態度から、同居はうまくいかない可能性が高い。同居を押し切られるまで多少の猶予があるようだが、その間に妻が娘に戻る「退行現象」(幼児化)が落ち着く可能性は低いだろう。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。