長女には厳しく、次女は甘く育てた
妙子さんはずっと専業主婦だった。夫は大手の鉄鋼メーカーに勤務しており、役員まで上り詰めた。なので、このままいけば、安泰の老後だったはずだが……。
「気が付けば次女が私たちの財産を食い潰しているような気がするんです。今も“ママ、お金ちょうだい”と無心に来る。こっちもしょうがないと思いながら、5万、10万と渡してしまう。だって夜の仕事などされてしまったら困りますから」
それにしても、長女と次女はあまりにもタイプが違う。同じ親なのに、ここまで違うのは珍しい。
「長女の時は、こっちも初めての子だから、きちんと育てたんです。しつけも厳しくして、時には手を上げたこともありました。神経質で病気がちで、気が抜けない子だったんです」
5年後に生まれた次女は、ただひたすらかわいかった。
「初めて子育ての喜びを感じました。私たちも経済的に余裕があったから、長女には買えなかったおもちゃや服などを買い与えてしまった。夫は“甘やかすな”と怒ったけれど、次女は長女と違って愛嬌があって、スタイルもよくてホントにかわいいんですよ。スポーツ万能で、友達もたくさんいてね……」
進学先も異なった。長女は県立高校から国立大学に進学した。次女は妙子さんの母校である都内の中高一貫の女子校から女子短大に進学した。
「長女にも私の学校をすすめたら、“そんなバカ学校行きたくない”と言うんですよ。でも次女は私の希望を聞いてくれた。学費もかかりましたけれど、あそこは本当にいい学校なんです。のびのびと育ちますからね」
聞くまでもないが、次女は私立女子校で“みんな持っているから~”とブランド物のバッグや財布をねだり、妙子さんはそのすべてを「買ってやった」と言う。
「惨めな思いをさせたくなくて。私が親からそうしてもらったように、次女にもできたことは満足しています」
【婿がコロナリストラに遭った後のお金の無心にあきれ果て……~その2~に続きます】
取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)、『週刊朝日』(朝日新聞出版)などに寄稿している。