今ではなく、余生で夫婦になれたらと思えた相手との出会い
離婚後にも親の助言通りに仕事を続けていたおかげで苦労することなく、一人暮らしを始めることができた。離婚から約9年、恋愛関係になった人は11歳の男の子を育てる男性だった。
「最初はまったく恋愛感情はなかったものの、子連れがネックにならないほど、魅力的な人だったんです。私も少しぐらいは学習能力があるので、結婚は意識せずにできる限り長く一緒にいられたらいいなという考えでした。相手からも、元奥さんとは死別しており、子育てがメインで再婚はまだまだ考えられないと伝えられていました」
付き合ってもう5年になるが、順調な関係を今も続けているという。子どもには現在も一度も会ってはいない。
「彼の息子は高校生になってから急速に親離れしたらしく、息子から『彼女でも作れば?』と言われているみたいなんです。でも、はぐらかしていると。私のことを紹介するという考えはまだないようです。少し寂しい思いも確かにありますが、紹介されたところでどうしていいかわからないですから、ね。結婚前提ならまだしも、『彼女です。よろしくね』って言うんでしょうか。もしまた嫌われたりしたら、彼は絶対に息子を選びますから別れることになってしまいます。勝ち負けじゃないのはわかっているけれど、私にそんな考えがあるうちはまだ会いたくないと思っています」
今も泊まりはなし、一緒にいられるのは夜の20時までと決めている。相手は部活の合宿で息子がいないときさえ、何かあったときのために自宅に過ごすようにしているとのこと。それについても寂しさはないと麻美さんはいう。
「だって最初からわかっていたことですから。5年付き合って、信頼関係はできていると思っています。いざというときに頼れるし、頼ってきてもらいたい、そんな関係になれているから、大丈夫。たとえ結婚していても永遠なんてないんだから、今はそんな関係を楽しんでいます。
彼とは子どもが巣立った後、一緒に余生を過ごそうと話し合っています。そのときに一緒に暮らすという新しい体験ができるんですよ。今から楽しみで仕方ないです」
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少し前に結婚情報誌のCMのキャッチフレーズ「結婚しなくても幸せになれるこの時代に私は、あなたと結婚したいのです」が話題になった。
今はまさに一人でも二人でもさまざまなかたちの幸せが存在する。結婚をするかしないかは周囲の声こそあれど、自由に選べる時代と言っていいだろう。麻美さんと彼は50代での結婚を、自分たちの意思で選択しようとしている。幸せのかたちに気づくのに、遅い早いもないことを今回は教えてもらった。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。