300万円相当のジュエリーが送られてきた
佳奈江さんは41歳のときに離婚した。それから16年間、2人は一緒に旅行をしたり、お互いの家を行き来したりして親しくしているという。
「佳奈江に再婚をしないのかと聞いたら、“私は結婚する男をみんなダメにするから”と言う。自分が魔性だって自覚があるんですよね。セクシーで美しくて影がある。頭がよさそうなのに、人を少しイライラさせるくらいの足りなさもあるから」
なぜ、そんな佳奈江さんと親しくしているのか。
「40代ってみんな忙しいんですよ。佳奈江以外の友達は、仕事、子供の受験、親の介護などなど家族が中心。友達と遊んでいるどころじゃないんです。旅行するにしても、“子供のお弁当があるから、1泊ならなんとかできるかも”とか、“主人に許可をもらわないと”なんて返事が来る。その点、私は“友達夫婦”で、子供がいないから気楽。お金に余裕もできてきたので、誰かを誘って何かをしたい。すると佳奈江に声をかける」
離婚後の佳奈江さんは、特に仕事をしているふうもないが、優雅に暮らしているという。
「美人は得というか、佳奈江のことを好きな男たちが“お手当”をくれているみたい。本人は肉体関係はないと言いますけれどね。先日、佳奈江の家でお茶していると、インターホンが鳴ったんです。モニターを見ると、スーツを着た男性が映っている。応対して玄関から戻って来た佳奈江の手には、有名なジュエリーショップの袋が。開封すると、300万円相当のペンダントが入っていました。佳奈江の家にはそういうものがゴロゴロあるんです」
あるとき、佳奈江さんのクローゼットで、千秋さんがのどから手が出るほど欲しかった、ドイツのブランドのバッグがタグをつけたままぶら下がっていた。
「8万円くらいのものなんです。佳奈江からしたらゴミのようなバッグですよ。もしかしたらくれるかもと思って、“これ、欲しいな”と言ったら、“え? あげないわよ”って。そのときに、頭を殴られるくらいショックだったんですね。だって、私は離婚の功労者であり友達じゃないですか。そのときに佳奈江はもらうのが当たり前で、人に与えることを絶対にしないことに改めて気づいたんです。だから、深く付き合うとイライラする。私が17年間も佳奈江と親友でいられたのは、彼女が持っているモノを、私が欲しいと思ったことがなかったから」
しかし、バッグを欲しいと思い、伝えてしまい、拒否された。
「あのときに、なぜ、娘たちが離婚のときに母親についてこないのか、親と絶縁状態なのか、など疑問に思っていたことが、パーっと解けました。それから、いろんなことにもやもやし始めています。主人が“そりゃ、大変だったな”と笑ってくれるからいいんですけれどね」
物事には因果関係がある。どちらかを見ていては、真実はわからない。ただ、まばゆいほどの魅力を放つ人の闇は、なかなか見えにくい。
千秋さんはそれに気づいてしまった。これから2人の友情はおそらく決裂していくだろう。でも、佳奈江さんはさして悲しまないのではないだろうか。なぜなら「徹底的に受け身」であるのに「一切を人に与えない」という性格の持ち主だからだ。その虚無に彼女はこれからの人生、何を埋めて生きていくのだろうか。
取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)、『週刊朝日』(朝日新聞出版)などに寄稿している。