取材・文/沢木文
親は「普通に育てたつもりなのに」と考えていても、子どもは「親のせいで不幸になった」ととらえる親子が増えている。本連載では、ロストジェネレーション世代(1970代~80年代前半生まれ)のロスジェネの子どもがいる親、もしくは当事者に話を伺い、 “8050問題” へつながる家族の貧困と親子問題の根幹を探っていく。
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娘が定職に就かないことも悩み
則夫さん(仮名・70歳)は、35歳になる娘の買い物依存に悩まされ続けている。
「娘はハケンっていうの? 短大を出てからそんな感じでフラフラしている。腰を落ち着けて働いてほしいのに、あれがダメだ、これがダメだと文句をつけては転職を繰り返している。もう僕にはお手上げ。今は週3勤務とかで、フラフラしているみたい」
則夫さんは関東近郊生まれ。幼いころから学業優秀で、地元の国立大学に進学。卒業後は、県立高校の教師としてキャリアをスタートし、60歳のときに校長として定年を迎えた。
65歳までは、県が運営する教育施設の館長として勤務を続け、第二の定年を迎える。現在は、教師向けの講演会に呼ばれたり、会報誌の執筆などを依頼されることが多いという。
則夫さんの世代の公務員は、年金をたっぷりもらえる。さらに、退職金も数千万円はあるだろう。さらに則夫さんは、毎月3~5万円の収入があると推測される。
もともと、地主の長男という生い立ちだから、資産運用もしているだろう。お金に全く苦労していないと推測できるが、そうではないという。
「娘が芯から腐っているというか……男手ひとつで育てたからか、わがまま放題になってしまって。娘には、“一人の娘である前に、教育者であるお父さんの娘なのだ”と自覚を促してもダメだった。中学時代から手が付けられなくなって、なんとか短大は出したものの、一度も正社員になったことがない」
【則夫さんの妻は何をしていたのだろうか? 次ページに続きます】