7年も不妊で悩んでいたのに、二度目は授かり婚
離婚後は経済力もなく、実家に戻ることに。元職場は元夫が働いているところで戻ることもできず、職業安定所でパソコンスキルをイチから学び、契約社員ながら事務員の仕事をスタートさせた。
「職業訓練は週5の朝から夕方までビッチリで、その4か月間は働くことができない。終了に近づくにつれて就職活動も同時に行わなければいけないから、わずかな貯金と財産分与で居心地の悪い実家に居候させてもらっていました。父親はお互いの話し合いで離婚したことが我慢の足りない娘にうつったのか、まるで私のことを見えないように扱うから、食事も家族から離れてしていました。
就職が決まってからも35歳からのオフィスワークスタートで、年下上司に気を遣われながら働くのはしんどかったですけど、一人暮らしができたときは嬉しかったですね」
職場先で出会ったのが今の夫。再婚に至った理由は「子どもができたから」。しかし、最初は籍を入れるつもりはなかったという。
「そのときには私は40歳を超えていたんです。しっかり調べてはいないけれど、避妊なしで7年も妊娠しなかったのでどこか自分はおかしいと思っていました。それなのに、避妊もしていたのに妊娠だなんて。どんなに相手に反対されようとも、私の中では産むの一択しかありませんでした。
でも、今の夫は5歳も下で付き合って1年未満だったので、もしかしたら産まないという選択をされるかもしれないと思って、おろせなくなる時期を待ってから伝えました。このままの関係で子どもを産ませてくれるか、別れても子どもを産ませてくれるか、というだけでした。元夫みたいだけど、極端な二択を作って、相手に迫ったんです」
夫はその選択のどちらも選ぶことなく、自分の意見をちゃんと伝えてくれた。
「夫は『ちょっと待ってよ。結婚しようよ』と言ってくれました。喜ばれるなんてまったく思っていなかったから、とても驚きましたよ。さらに、子どもがすでに大きくなっていることに対しては、伝えるのに悩んだんじゃないかって気遣いまでみせてくれました。
私たちの結婚生活は子どもができたことからスタートしましたけど、お互いが同じ方向を見た結婚生活がこんなに幸せだなんて。両親や、一度目の結婚では嫌な部分しか気づけなかったから」
まどかさんはその7か月後に無事子どもを出産して、今は3人で暮らしている。
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二択を提示して相手を心理操作する方法は、実際に営業テクニックとして紹介されている。人の脳は目の前に出された選択からより良いものを選ぶことに注力してしまい、他の選択肢があるということに気づけないという。選択肢から選ぶことで怖いのが、選んだものに納得していなかったとしても、「自ら選んだことだから」と自分自身を言い聞かせてしまうこと。そのことによって気づかないうちにストレスを抱えてしまうこともある。
夫婦はお互いの意見をすり合わせるもの。どちらかを選択させる方法では対等な夫婦関係は築けないだろう。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。