良かれの行動は簡単に押し返すことができない
安定期に入り体調が落ち着いてからも義母の訪問は続き、子どもが女の子とわかると生まれる前から家には義母が買った赤ちゃんのグッズが増えていった。
「『女の子はピンクがいいのよね』と義母はルンルンで子どものグッズを買ってきて、部屋がどんどんメルヘンになっていきました。ありがたいけど迷惑でした。低姿勢に『また買ってしまったんだけど、お家に置いてくれるかしら』と事後にお伺いをしてくれるんですが、いりませんよとは言えないですよね。夫に申し訳ないからと遠回しに伝えても『嬉しそうに好きでやっているんだからさせてやれよ』と言うだけでした。
どれも身重の私を気遣って代わりにという行動なので、子どもが生まれるまでなのかなって思っていたのですが……」
郁恵さんの思惑は外れ、無事出産した後に義母の世話好きはエスカレート。子どもが生まれてからは週に一度泊まり込みで郁恵さんと子どもの世話をしに来るようになった。
「一度『夫も協力してくれていますし、私たち2人で大丈夫です。毎週は申し訳ないですから』と伝えたんですが、『私がやりたくてしていることだから気にしないで!』と。そこから義母が来るまでに完璧に家事を終わらせてやろうとか頑張ったりもしたんですが、義母は何をしても動じなくて、もう諦めました」
郁恵さんは3年後にも女の子を出産。そのときには開き直って「義母を利用させてもらった」と語る。一方の義母も、コロナ禍や、郁恵さんが仕事に復帰したこと、さらには年齢のこともあり、家に訪れる機会は減っているという。
義母の“仲良くしたい”という気持ちからの世話焼きで感じるストレスは、その気持ちに答えられない罪悪感からきている可能性も考えられる。そんなときは、その行動だけを受け取る、利用すると割り切ってしまえばいい。実際に義両親とは所詮他人と割り切って付き合っているという妻の意見は多い。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。