ファンの重鎮から「私たち、友達になりましょう」と言われる
「あの人」とは、50代の人気俳優だ。時代劇から現代劇まで出演し、人柄の良さでも知られている。スキャンダルもほとんどない。
「テレビでやっていたのは、若い頃のドラマの再放送だったんですが、彼が出ると画面が発光する感じがありました。また、発する言葉が神がかっており、見入ってしまったんです。主人の死で乾いていたこころに、オーラと光がしみこんでくる感じがしました。ドラマを観終わった後に、彼のことをもっと知りたくて、パソコンを立ち上げたのです。それまでほとんど触ったことがなかったのに、検索をしました。ファンクラブの入会、ファンレターの出し方など、いろいろ調べました」
映像のサブスクサービスにも加入し、過去作品を一気に見る。
「主人がまとまったお金と不動産を残してくれたとはいえ、推し活にはお金がかかります。私は再びパートに復帰しました。追っかけてわかったのですが、売れっ子俳優って、イベントやトークショーなどいろんな仕事があるんですね。大小のイベントに行き始めて1年くらい経った頃でしょうか。弥生さん(63歳)に“あなた、いつも来ているよね”と声をかけられたんです」
弥生さんはその俳優のことをデビュー前から40年以上応援しているファンだと言った。珠美さんも、簡単な自己紹介をする。すると、弥生さんは珠美さんのピュアな推し活の姿勢に心打たれたようで、「私たち、お友達になりましょう」と言ってきた。
「その直後にわかったのですが、弥生さんは、その俳優と個人的につながっていたんです。というのも、弥生さんのご主人は俳優の元マネージャーで、事務所の役員です。弥生さんは学生時代からその俳優の追っかけをしていたとか。そして、マネージャーに“ファンを束ねてくれないか”と依頼され、献身的に動くうちに、いつしかそのマネージャーと恋愛関係になり結婚。社会人の息子さんが2人います。当然、俳優とも家族ぐるみの付き合いをしており、弥生さんご夫妻の伊豆の別荘でくつろぐ俳優の姿、猫と戯れる姿など、絶対に見ることができないプライベート写真を見せてくれました」
弥生さんは、まさにファンのトップ オブ トップ。
「そんな人に認められるのも嬉しく、舞い上がりました。弥生さんとLINEをするために、スマホにも買い換えました」
【前日の誘いに断ると「あちゃ~、残念だね」と失礼な返事が……その2に続きます】
取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)、『週刊朝日』(朝日新聞出版)などに寄稿している。