取材・文/沢木文
「女の友情はハムより薄い」などと言われている。恋愛すれば恋人を、結婚すれば夫を、出産すれば我が子を優先し、友人は二の次、三の次になることが多々あるからだろう。それに、結婚、出産、専業主婦、独身、キャリアなど環境によって価値観も変わる。ここでは、感覚がズレているのに、友人関係を維持しようとした人の話を紹介していく。
友情はラジオ深夜放送で育まれた
智子さん(64歳)は、1年前コロナ禍中に、5歳年下の男性と結婚した。その時に、40年近く友情をはぐくんでいた良子さん(65歳)から絶交され、それまでの友人関係から遮断をされてしまう。
「良子さんと私は元同僚。趣味も似ており共通の友人も多い。彼らに“智子さんは略奪婚した”などとウソを言われて、友達とも疎遠になってしまった。結婚するまで私と良子さんは、ホントに仲が良かったんです」
その友情について伺った。
「今思うと、私たちを繋げていたのは“独身”と言うことだけだったんですよ。当時、結婚はクリスマスイブ(24歳)までにするもので、クリスマス(25歳)になったら焦らなくてはいけないと言われていたんですよね。私は“女だてら”に大学に進学した“はみ出しっ子”だったので、親や親戚は結婚しろとはあまり言わなかったので、そのまま来てしまった」
ここ数年で性差の平等の意識は浸透し、「女性だから」「男性だから」というモノの言い方をする人は少なくなった。
「いい時代ですよね。私は勉強が好きで、通学していた県立の進学校でもトップクラスだった。父は“女が大学に行ったら嫁の貰い手がなくなる”と言っていたけれど、母がとりなしてくれた。“国立なら”という条件で受験し、東京の国立大学に合格。英語ができたから今の会社(物流会社)に就職したんです」
そこで出会ったのが、良子さん(65歳)だ。彼女は東京出身で有名私大を出ていた。人脈も豊富でまぶしい存在だったという。
「よく“職場の華”というでしょ? まさにあんな感じ。私たちの頃は大卒でも女性社員はお茶を淹れたりコピーをとったりしていたんですけれど、そういうときも優雅で男性にもモテた。私は北関東出身なんだけれど、彼女は都心のお店に詳しくて、憧れだった」
他部署にいた2人を繋げたのは、ラジオの深夜放送。
「私たち、『オールナイトニッポン』が好きだったんですよ。パーソナリティの番組を愛聴していた。親しくなったきっかけは、彼女がハガキを読まれたこと。あれって不思議なもので、住んでいるところとラジオネームだけで“あれ? もしかしたら良子さん?”とひらめくの。それで、“もしかして……”と話しかけたら、良子さんだった。それが最初の会話」
地方出身で地味な智子さんと都心で生まれ育ち華やかな良子さんは「デコボココンビ」と揶揄されながらも友情をはぐくむ。
【「結婚しないと女は未完成だ」と女性社員に言われた悔しさを共有。次ページに続きます】