関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、肉親を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。
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今回の依頼は、最近増えている、離婚後に離れて暮らす子供の素行調査です。隆二さん(仮名・62歳)は、「娘と連絡が取れない」と私たちに依頼をくださいました。
娘と連絡が取れないのは、元妻が原因?
依頼はZOOMで行われました。というのも、隆二さんは現在米国在住。仕事やコロナ禍の影響もあり、帰国できないために私に調査を依頼。隆二さんと私は、私が探偵の修行中だった15年ほど前からのお付き合いです。
最初の依頼は、奥様の浮気現場を押さえることでした。その後は、当時隆二さんが勤務していた会社の役員の素行調査。その後、隆二さんが起業してからは、取引先やライバル会社の調査にも入っており、お得意様中のお得意様です。
「山村さん。娘と連絡が取れなくなった。10月頃から電話にあまり出なくなったし、メールしてもそっけない返事が来るだけ。メールの返事は数日後に届くことが多くなった。こちらも仕事に忙殺されていたから、気付けばLINEの既読も付かなくなってしまったんだ」
娘さんは現在20歳。都内の理系の私立大学に進学したのは知っていました。
隆二さんは10歳年下の妻の度重なる浮気が原因で、彼が47歳、娘が5歳の時に離婚しました。妻は離婚当時37歳で、めちゃくちゃ美人だったことを覚えています。
「当然、娘は自分が引き取ろうと思ったのだけれど、日本は母親が強い。元妻に我が子を奪われてしまった。あの女のことだから、“パパはあなたより仕事をとったのよ”などと吹き込んでいたのでしょう。毎月の養育費10万円を支払う代わりに、月に1回の面会ができた。その間に“パパは君を愛している”と言ったのに、家に帰れば母親から“パパはあなたを捨てた”と言われて育てば、気持ちも弱くなりますよね」
そして、美しい母親は奔放だった。娘を自宅に放置し、多くの男性とデートを重ねていた。
「全寮制に近い小学校に入れたり、新しい父親と2人きりにされて、僕の母親が心配して観に行ったこともあります。中学校から僕の仕事場用のマンションで一人暮らしをしていた時期もありました」
【うつ病の治療をしたこともあった……次のページに続きます】