税務調査とは、税務当局によって納税者が正しい申告を行っているかを調査することです。所得税の確定申告などは、自主的に計算して申告納税する制度が採用されています。そのため計算ミスや誤った税法の解釈があった場合に、適切に計算申告するよう指導をうけることになるのです。

そこで今回は、日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)の税理士 中川義敬が、長年にわたる税務調査のサポートを通じて得た幅広い知識や経験に基づき、税務調査の対象になりやすい個人事業主の所得についてご紹介したいと思います。

目次
税務調査の対象になる、個人事業主の所得はいくらから?
個人事業主の税務調査では何を調べられるのか?
個人事業主が税務調査の対象になったら何をすべき?
個人事業主の税務調査対策はある?
まとめ

税務調査の対象になる、個人事業主の所得はいくらから?

今回のテーマである「税務調査の対象になりやすい個人事業主の所得はいくら?」については、結論から申し上げますと、明確な所得金額の基準はないと言っていいでしょう。税務当局側には、一定程度の目安はあるのかもしれませんが、公表されているわけではありません。

では、「税務調査の対象になりやすい個人事業主」という視点で考えていくと、次の事項に該当する場合、一般的に対象になりやすいと考えられます。

・売上や経費が急激に増えたとき

税務当局は個人事業主の申告を時系列でも管理しているため、売上や経費が急激に増加し、異常値と認識したときは税務調査の対象となる可能性があります。

・売上に対して利益が少ないとき

これも税務当局側は同業他社の膨大なデータから、業種業態ごとにある程度の平均値を参考資料として持っています。売上に対して利益が少ないとなれば、所得隠しや経費の過大計上を疑われて税務調査の対象となることがあります。

また、国税庁が令和3年11月に「令和2事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」を公表しました。参考として、令和2年事務年度における、事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得⾦額が、⾼額な上位5業種が挙げられています。上位順にプログラマー、畜産農業(肉用牛)、内科医、キャバクラ、太陽光発電となっています。これらの業種は税務調査の対象になりやすいと言えるでしょう。

個人事業主の税務調査では何を調べられるのか?

税務調査で調べられるものとしては、個人事業に関わる次のものになります。

・過去の確定申告書や決算書
・元帳
・帳票類(契約書、請求書、領収書などの帳簿を作成する元となる書類)

これらをもとに、書類を精査しそれぞれ以下の内容を確認します。

・売上や仕入

計上もれがないか、過大計上がないか、計上の時期に誤りがないか(特に決算末日前後の取引)を確認します。

・棚卸資産

実地棚卸が行われているか、計上もれや過大計上がないか、場合によっては実際の倉庫などを確認する場合もあります。

・人件費

架空人件費はないか、給与から天引きする源泉徴収額が適切かなど、賃金台帳や源泉徴収簿や扶養控除等の申告書、座席表やタイムカードなどを確認。

・一般管理費

架空経費はないか、事業とは無関係のいわゆる私的経費はないか、福利厚生費などで本来人件費として計上すべきものはないかなど、費用の性質や経理の適正性を確認。

・雑収入

臨時的な取引が該当する場合が多いため、計上漏れが発生しやすくなります。

個人事業主が税務調査の対象になったら何をすべき?

税務調査における必要書類を準備することになります(少なくとも過去3年分、長くて過去7年分)。

・確定申告書
・貸借対照表や損益計算書等の決算書
・総勘定元帳や補助元帳
・請求書や領収書等の帳票類
・棚卸表
・預金通帳や現金出納帳
・源泉徴収簿や扶養控除等申告書など人件費に関する書類

以上が一般的に必要な書類になります。しかし、それ以外にも臨時的な取引に関する契約書や設備投資を行った場合の工事明細などを整理・準備しておくとよいでしょう。

個人事業主の税務調査対策はある?

常日頃から税法などのルールに基づいた会計処理や税務申告を行っていれば、税務調査で指摘をうけることはありません。それが最もよい税務調査対策であると言えます。ただし、人間のすることなので過去数年にわたって完璧というわけにはいかないでしょう。そこで調査現場での注意事項を以下に記載しますのでご参考にしてください。

事業内容や取引に関する聴き取り

一般的に税務調査官は、現場でいきなり書類をみるのではなく、事業主との会話をしながら事業内容や取引の流れなど全体像の把握を行います。そのなかで最近の時事ネタやスポーツネタなどうまく雑談を交えながら、事業主の性格や趣味も確認しようとします。

それが後の調査に影響する場合もありますので、必要以上にリラックスしたり、警戒したりせず、業務上の必要な範囲で応対してください。

当日の現金取引は調査の対象

調査時における現金出納帳の残高と現金有高は、一致させておきましょう。金額が不一致だと、日常的にずさんな経理が行われているという印象を持たれる可能性があります。

金庫や事業主のデスクまわりの整理

調査時に金庫や事業主のデスクの中を調べたりすることがあります。帳簿にのっていない現金や領収書などがあれば、売上の除外などの脱税行為を疑われることになりますので、きちんと整理しておきましょう。

質問されたことにだけ回答

調査時には、質問されたことだけ回答しましょう。余分なことは話さず、わからないことは正直にわからないと答え、調べて後日回答してください。わからないことを曖昧に回答すると、かえって不信感を持たれます。

まとめ

税務調査の対象となりやすい個人事業主の所得がいくらかは、明確な基準がありません。しかし、日常業務を正しく行うことで、税務調査に対する備えを行うことができます。国税庁の公表した資料には有価証券・不動産等の⼤⼝所有者、経常的な所得が特に⾼額な個人、海外投資等を積極的に⾏っている個人などの「富裕層」や暗号資産(仮想通貨)取引、ネット広告等の新たな分野の経済活動に対しても積極的に調査を実施していることが記載されています。

会計処理や税務申告について不安に感じられる場合には、税務の専門家である税理士にご相談されてはいかがでしょうか。

構成・編集/松田慶子(京都メディアライン ・https://kyotomedialine.com

●取材協力/中川 義敬(なかがわ よしたか)

日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士
東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業継承コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業継承」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。

日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com

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