同じように時間と金を使えるママ友はいない
千香子さんは夫の愛人を黙殺していた。
「子供を2人産んだのは私だし、愛人に子供はいません。もし、主人が離婚したいと言っても、絶対に別れてやるものかと心を強く持ちました」
千香子さんは、出会ったばかりの頃、夏美さんにそのことを言ったら、「私は主人にその人と別れてほしいと言ったよ」とさらりと言われた。しかし、夏美さんの夫は「彼女は会社の運営の中枢にいる。仕事の相談相手でもあり、会社の幹部ともうまくやっている。彼女の代わりはいないが、妻の代わりはいくらでもいる」と返答されたと、千香子さんに打ち明けた。
「私だったら生きていけないと思いました。そこまでひどいことを言われて、傷ついているんだろうな……と勝手に解釈してしまい、夏美さんに“今年の夏、どこかに旅行でもしない?”と提案したら、“ハワイ”と言われたんです。私から提案したのだから、プランを立てなければ……とホテルやレンタカー、アクティビティなどを予約し、それぞれ母娘4人でハワイに旅立つことにしたのです」
千香子さんは夏美さんと出会うまで、学生時代の友達とは疎遠になっていた。それは、同じようにお金と時間を使える人がいないから。
「“院長夫人”とやっかまれるし、学生時代の友達とランチをして食後にコーヒーを頼むと“あら、お金持ちはいいわね”と言われる。せっかく東京にいるのに、気になる店に一緒に行ける人がいないことに不満をもっていました。でも夏美さんなら二つ返事で“いいわね”と言ってくれる」
千香子さんはミーハーだ。情報を収集しては、夏美さんに提案し、二人は最新の食や観劇などの文化を体験する仲間になっていった。
【「あなたが予約するのは、当たり前じゃない?」……その2に続きます】
取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)、『週刊朝日』(朝日新聞出版)などに寄稿している。