「人間、何事も学びと経験が大切」と申します。とは言え、好き好んで学びたくはないこと、できる限り経験したくないことも随分とございます。
その“できれば敬遠したい物事”の一つが“仏事”、特に「葬儀」に関わる事。好き好んで葬儀を経験したいという方は、滅多においでにはならないでしょう。また、一般的に何事も起こらぬ時に“仏事”について学ぶこともいたしません。
ですから、家族や近親者との“永遠の別れ”に接しますと、深い悲しみの中にあって取り乱し、慌てふためき、「わからない事だらけ!」という事態になりがちです。
事が起こったら「葬儀の専門家にお任せ」と考えておられるかもしれませんが、葬儀の専門家とて立ち入れない事、当事者が決めなければならない事も多くございます。そうした事は「葬儀に関する作法・知識」として身に付けておきたいところです。
そこで、この記事では「香典返しのマナー」について、京都・滋賀で80年の歴史を持ち年間約6,000件の葬儀を施行する、葬祭専門企業・公益社(https://www.koekisha-kyoto.com)がご紹介いたします。
もしもの時、その日の時に、この記事をお役立てください。
目次
「香典返し」とは?
「香典返し」の準備はいつ頃からした方がいい?
「香典返し」の金額の目安は?
お礼状・挨拶状は必要?
まとめ
「香典返し」とは?
葬儀に際して故人に対し、香典やお供え物などをいただいた方への返礼品のことを「香典返し」といいます。元来「香典」とは、お供えの意味があり故人への供物を指しますが、出産や婚礼と違って不意に訪れる葬儀は、その費用を分担し負担を軽減する互助的な色合いが強いものでした。
近年では「香典返し」の習慣は一般的になっていますが、じつはまだ比較的新しいものです。いまでも農村部などでは、喪主が「忌明け(きあけ・いみあけ)」の食事の宴をしているところもございます。ところが近年、都市部ではご近所付き合いの形も変わり、忌明けの食事の宴を行わず、その形を変えて「香典返し」になったものと言われています。
「香典返し」は、一般的には忌明け以降にお送りします。ただし、「忌明法要」にお招きする方には当日にお渡しされます。「忌明け」とは、故人が亡くなられた日から49日目(35日目のこともあります)のこと。また、通夜や告別式に参列いただいた方にその日にお渡しする返礼品のことは、「会葬御礼」で、「香典返し」とはまた違います。
近年では葬儀の略式化に伴い「香典返し」をその日に手渡しする「即日返し」も増えているようです。
「香典返し」の準備はいつ頃からした方がいい?
忌明けの2週間ほど前には送り先名簿を作り、取扱店へ依頼する必要があります。品物の選定など含めて、葬儀後半月程度経過してから準備をするのが良いと思われます。「香典返し」を「即日返し」で行う場合は、葬儀前に準備しなくてはいけません。
「香典返し」の金額の目安は?
「香典返し」には「半返し」という言葉があるように基本的には2分の1でよろしいかと思います。地域によっては3分の1という地域もあるようで、ということから、実際には香典の金額の2分の1から3分の1程度と柔軟に幅を持たせて構わないでしょう。
金額の目安
「会葬御礼」については、相場として400~1,000円程度が一般的とされています。当日お持ち帰りいただくので、かさばらず軽いものがいいでしょう。「香典返し」の金額の目安ですが、香典の相場が3,000円~1万円程度になっていますので、その金額の2分の1程度と考えられます。何段階かの金額のものを用意しておき、香典の金額に見合ったものをお送りするようにしましょう。親族や身内から5万円以上の多額な香典があった場合は、お返しはあまり多額にならないように配慮し、3分の1から4分の1程度に抑えておくことが必要です。
品選びのポイントは?
品物としては、不祝儀をあとに残さないという意味で、消えてなくなるものがふさわしいとされています。お茶やのりなどの飲み物や食品、その他に洗剤やタオルなどの消耗品も適しています。最近では相手に好きなものを選んでもらえるギフトカタログなども人気です。
いずれにせよ、忙しい中、葬儀に駆けつけてくださった方への感謝の気持ちが伝わることが大切です。
また、熨斗(のし)に関してですが、熨斗は慶事の際の贈り物に添える縁起物です。したがって、弔事には使われません。香典返しは、奉書紙か半紙に包み、黒白の水引をかけ、上の方に「志」か「忌明志」と印し、下部に「〇〇家」と書きます。
お礼状・挨拶状は必要?
お礼状(会葬礼状)は、葬儀に参列いただいた方へお送りいたします。郵送する場合もありますが、ほとんどは葬儀の際に、清めの塩や会葬御礼の品とともにお渡します。
挨拶状(忌明挨拶状)は、忌明日に無事に忌が明けたことをお知らせし、改めて弔慰へのお礼を述べます。用紙は奉書紙の巻紙を用い、文面は筆書き書体で書きます。また、挨拶状を入れる白封筒には表面に挨拶状と書き、裏面には喪主の住所・氏名を書き記します。それらに加え、お香典返しの品に貼る戒名短冊と合わせて印刷し、「香典返し」の品を送るときにその包装につつみ送ります。
忌明挨拶状の例文
挨拶状には、香典をいただいたことへの感謝の気持ちと、忌明けの報告、香典返しを送った旨を必ず書き添えます。文中、句読点は使いません。読点を使いたい場合は1文字分の空白を使うなどして工夫します。
以下が例文です。
謹啓
○○の候ご尊家ご一同様にはいよいよご清祥にお過ごしの御事と存じます
さて先般 父●●死去に際しましてはご繁忙中にもかかわりませずご懇篤なご弔慰を賜りご芳情の程 誠にありがたく厚く御礼申し上げます
お陰をもちまして本日滞りなく忌明けいたしました
つきましては早速拝眉の上御礼申しあげる筈でございますが略儀ながら書中をもってご挨拶申しあげます
敬白
令和〇年〇月〇日
〇〇 〇〇
追而 甚だ失礼ながら忌明の印として粗品をお届け致しましたので何卒ご受納下さいませ
まとめ
「香典返し」の金額の相場や品選び、いつ何と一緒に送るのか? などを解説させていただきました。「香典返しひとつとっても、こんなにたくさんのことを考えながら対応しなくてはならないのか」と思われているのではないでしょうか? 事前に何も知らない状態で、身近な人を亡くし悲嘆にくれている時にこれだけのことを考えるのは大変なことだと思います。
葬儀を終え忌明けまでの間は様々な対応に時間を取られます。でもそれは、故人を失い悲嘆にばかり暮れていられない。喪に服すとは、残されたものの心の再生期間のための時間なのかもしれません。
●編集/中野敦志(京都メディアライン・https://kyotomedialine.com FB)
●取材協力・監修/公益社(https://www.koekisha-kyoto.com)
京都・滋賀で80年に渡り葬儀奉仕の道をひと筋にあゆんでいます。「もしも」のとき安心してお任せいただけるのが公益社です。