物への価値観の違いから、離婚
夫が最初に気づいたのは、キッチンの異臭と水はけの悪くなったお風呂の排水溝。優子さんは見えている箇所しか掃除を行わなかったことで、排水溝が表現できないほど汚れていたそう。しかし、それを注意されたことが恥ずかしかったと振り返る。
「自分の恥ずかしいところを無理やりに明るみにされたような気分になりました。私は嘘がバレバレなのに、掃除していなかったことを認めなくてケンカ腰になり、夫からはうんざりしたようなため息を吐かれました。
そこから夫は私の掃除がちゃんとできているか、チェックするようになったんです。ちゃんとやっていればいいだけの話なんですが、私は隠すことばかり考えていました」
そんな中、夫の転勤が決まり、福岡から東京に引っ越すことに。この引っ越しをきっかけに夫婦の仲は急激に悪くなっていった。
「物に対する価値観が違うんです。『身軽で東京に行きたいから荷物を減らせ』と、“掃除できないくせに”と付け加えながら言ってきて……。さらに『同じ日本なんだから新調すればいい』と、そこまで裕福じゃないくせに物を粗末にする考え方が大嫌いでした。
私がどんなに大切なものだと説明しても、服やカバン、靴、それに学生時代から使っていたタオルケットやぬいぐるみも捨てろって。服やカバンは減らしましたけど、学生時代の思い出はこっそり運びました。だってこれは夫よりも大切なものなんですから」
東京で暮らし始めて、優子さん夫婦は2年弱で破綻。その理由は、「自分のことを一切わかってくれない人によく見られたいという思いがなくなったから」。
「家事をする気がなくなったんです。今まで夫にはよく見られたいからと表面的にでも頑張っていた掃除もやめました。相手が歩み寄ってくれないのに、こっちも嫌いなものを無理する必要ないんじゃないかなって。もちろん夫は汚れている部屋に帰って来る度に激怒。最終的には向こうから離婚してほしいと言われて、慰謝料はお互いなしで、財産分与として一定の期間は無職でもやっていけそうな額をいただきました。
そして、離婚をしてからも、私はあのキッチリした母親の元に帰りたくなくて、東京で一人暮らしを始めました」
人生始めての一人暮らしで汚部屋民になってしまった優子さん。再婚相手はその事実を知りながら、優子さんを受け入れてくれたというが……。【~その2~に続きます】
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。