取材・文/ふじのあやこ
厚生労働省が発表した「令和2年(2020)人口動態統計月報年計(概数)」では、2020年度の婚姻件数は 52万5490組、離婚件数は19万3251組。婚姻件数、離婚件数ともに前年よりも減少しているものの、今もどこかで夫婦が誕生して、夫婦が他人になっている。日本の非婚化がメディアなどで多く取り上げられているが、今回は離婚を経験後に再び家族を求める人たちに、その理由を伺っていく。
「私は一度目の結婚をしてから、自分がまったく片付けをできないことに気づいたんです。それまでは母親にずっと囲われていて、“片付ける”ということを考えたこともありませんでした」と語るのは、優子さん(仮名・38歳)。優子さんは実家で暮らしていたときは自分のことをきれい好きだと認識していたのは、母親がすべてをキレイにしていてくれたからだという。
完璧主義の母親に囲われていた子ども時代
優子さんは福岡県出身で、両親と3歳上に兄のいる4人家族。優子さんの母親は教育ママで完璧主義者。家でも息が詰まるような生活だった。
「母の口癖で覚えているのは、“物には帰る場所があるの”ですかね。物は元に戻すことが絶対で、テーブルに物がのっていることが大嫌いな人。他の3人がご飯を食べていてもお構いなしに片付けを始めていましたね。
家は母親の時間で動かなければいけなくて、こちらの都合は完全に無視。そんな母親のキッチリし過ぎた性格に疲れたのか、父親は小さい頃こそ帰って来ていましたが、徐々に家に寄りつかなくなり、兄も大学で早々に家を出ました」
優子さんが一度目の結婚をしたのは23歳のとき。実家を出たい思いから、短大時代に友人に紹介された5歳年上の男性と結婚。実家暮らしからそのまま新婚生活に入り、掃除ができない自分に気づいたという。
「結婚はプロポーズもされたし、これで家を出られるのなら……という感じでした。
私は専業主婦になり、料理や洗濯、掃除など家事を頑張りました。実家のキッチンは母親のテリトリーで汚すからと使わせてもらえなかったから料理は得意じゃなかったんですが、それでも3年ほど付き合った期間に彼の家で作ったこともありましたし、レシピ通りに作れば、まぁなんとかなった。洗濯もマニュアル通りに行えばできました。問題は掃除でした。夫の目に触れるところであればキレイにできたんですが、それ以外をやろうという気が起こらなかったのです」
【物への価値観の違いから、離婚。次ページに続きます】