取材・文/ふじのあやこ
厚生労働省が発表した「令和2年(2020)人口動態統計月報年計(概数)」では、2020年度の婚姻件数は 52万5490組、離婚件数は19万3251組。婚姻件数、離婚件数ともに前年よりも減少しているものの、今もどこかで夫婦が誕生して、夫婦が他人になっている。日本の非婚化がメディアなどで多く取り上げられているが、今回は離婚を経験後に再び家族を求める人たちに、その理由を伺っていく。
「初恋ではなかったけれど、かなわなかった恋っていい思い出のように残っているんですよね。もういい大人なのに、再会すると一気に当時の気持ちに戻されてしまって」と語るのは、杏那さん(仮名・40歳)。元夫に大きな不満は一切なかった。ただ好きな人と一緒になりたい気持ちで離婚を決めたという。
会社で出会った男性に7年を費やすも彼女にもなれなかった
杏那さんは栃木県出身で、両親との3人家族。専門学校まで実家から通い、就職とともに上京。職場で出会った男性と親しい関係になるも付き合えなかったと振り返る。
「彼は3つ上で、大卒だったから1年だけ先輩でした。仕事は写真のレタッチャーで、商品モデルから水商売の方までさまざまなものを扱っていました。締め切りが直前のものの依頼がくることなんてザラで、残業が多くてほぼ会社にいるような週もありました。そんな中でその男性と仲良くなったんです。
男女の関係にはなれた、でもそれだけだった。端的に言うと、都合の良い女という感じ。私は好きだったから、その好意を利用されて、呼ばれたらどこでも、いつでも会いに行っていました」
その期間は約7年。その間に相手の男性は彼女を変えることもあったものの、杏那さんが彼女になれることはなく、相手は仕事をやめて結婚。連絡は途絶えてしまう。
「捨てられるような関係でもなかったんですけど、仕事というつながりがなくなったらまったく連絡をもらえなくなり、同じ会社の同僚から彼が結婚したと聞きました。聞いたときはすごいショックでしたけど、相手がいることは知っていたし、これでやっと諦められると少し気が楽になったかな。何度も諦めようとしたけれど、会社で顔を合わすと全然忘れられなかった。こんな関係をやめたいと思いつつも、もしかしたら呼び出されるかもと思って夜に予定もあまり入れられなかったんですよね。やっと他の人に目を向けられるって思いました」
【結婚生活は穏やかで退屈だった。次ページに続きます】