結婚生活は穏やかで退屈だった

そして、28歳のときに前の夫と出会う。友人が主催した飲み会の場で、相手から誘われるがままに仲良くなり、約1年半の期間を経て結婚に至った。元夫の印象を「どこまでも優しい人だった」と語る。

「28歳のときに出会って、30歳になる3か月前に結婚しました。相手に求められてする恋愛はこんなにスムーズに事が運ぶんだなって思いましたよ。前の相手が初めての人ではなかったけれど、学生の頃からどれも不自由な恋愛ばかりだったから、これが運命の人ということなのかなって思ったりもしました。

でも、大好きだったかと聞かれたら、好きではあったけれど……、どちらかというと嫌なところがなかった、というほうが当てはまっているかもしれません」

付き合っている期間も結婚してからも元夫とケンカしたことは一度もなし。暮らしたい場所も子どもについても全部杏那さんの希望を聞き入れてくれた。

「結婚生活はいいように言うと“穏やか”で、悪く言うと“退屈”。元夫には自分の意見というものがありませんでした。何を聞いても『いいよ』というだけ。新居も私の職場が近いところにしてくれたし、子どもは数年欲しくないという意見も受け入れてくれた。夫は私よりも6歳上ですぐにでも欲しかっただろうに、困ったような笑顔で頷くだけ。それに、義母から子どもの催促をされると、夫は自分がまだいいと言ったとかばってくれました。義両親とも無理に付き合う必要はないと言ってくれていましたし」

結婚して5年目のときにSNSで元職場の大好きだった先輩を見つけて、連絡を取ってしまう。ここから、結婚生活は大きく傾き出す。

「SNSで連絡先を登録している人や、共通の友人が多いと、“知り合いかも”と出てくる一覧に見つけたんです。きっと連絡しても返信なんてないと自分の中で何度もつぶやきながら、ドキドキしながらダイレクトメッセージを送りました。

そしたら『久しぶり!』と返信がすぐにありました。何度かのやりとりをして会う約束をして。その間ずっと浮かれていました。まるで昔に戻ったように。あのとき苦しかったはずなのに、楽しい思い出として自分の中では残っていたんですよ」

もう2番手は嫌だし、夫も裏切りたくない。杏那さんは関係を求めてきた相手に対して、プロポーズともとれる発言をした。【~その2~に続きます】

取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。

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