関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、肉親を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。
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今回の依頼者は、信夫さん(仮名67歳)。関東近郊にある不動産関連会社に勤務しています。結婚30年、60歳の妻がおかしいと私たちに相談をしてくださいました。
30年間、月40万円の生活費を渡しても貯金をしていない
「おかしくなったきっかけは、私との夫婦ゲンカなのです。妻は浪費家で貯金ができない。といっても、ブランド物を買うとか、飲み食いや旅行をするとかそういうことでは使わないのです。スーパーマーケットに行って、食べもしないものを買い込む癖がある。特に半額になっているとそれだけで買ってしまうようで、夫婦二人では食べ切れない量の総菜を冷蔵庫に詰めており、食べられなくなったら処分するということを繰り返していたんです」
まだ、家に2人の息子たちがいた頃は、彼らが食べてくれた。しかし2人とも結婚し、独立してからは夫婦2人暮らし。60代の夫婦では、食べられる量も限られている。
「本当に無計画なんです。私がそれを指摘すると怒って言い争いになる。私はこの30年間妻に家計を任せていたんですが、結果的に妻は貯金を全くしていなかった。毎月、40万円を渡していたのに、きれいさっぱり使い切っていたんです」
保険、家のローン、息子たちの支出は信夫さんが払っていた。それなのに使い切っていることに、信夫さんは激怒した。
「結局、私が働いた金が、冷蔵庫の半額総菜に消えていたってことですよ。それが情けなくて悔しくて、かなり激しく叱責した。すると妻は“いいわよ。偉そうに。あんたなんか仕事、仕事で私たちのことは捨てていたじゃない”と言い返してきた。それに腹が立って、手を上げてしまったんです。その結果、“じゃあいいわよ。働けばいいんでしょ”と勤めに出てしまったんです」
信夫さんは「専業主婦をしていた人に仕事ができるはずがない」とバカにしていた。しかし、妻は公立小学校の給食を作る会社にパートとして入り、開始半年でチーフになり、今は準社員として勤務しているといいます。
写真を見せていただくと、60歳とは思えないくらい愛嬌があり若々しいタイプ。頬が丸く中肉中背で明るくかわいい女性です。
【最初は朝だけだったのに、今は夜まで帰ってこない。次のページに続きます】