関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、肉親を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。
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妻が一緒に風呂に入りたがらない
今回の依頼者は、稲村雄二さん(仮名・63歳)。元国際線パイロットで、現在は後進の育成にあたっています。目がパッチリとしていて眉が太く、鼻梁が高いという昭和のハンサム顔。実家は東海地方の名家で、アメリカに留学経験もあるというエリート中のエリート。
「幼い頃からパイロットになりたくて、夢をかなえるために努力を繰り返してきました。それも楽しいんですよね。飛行機と空が心から好きで、そのために結婚も遅れてしまった」
私のところには多種多様な依頼者がいらっしゃいますが、大手航空会社でパイロット経験がある人は初めてです。
ちょっと質問すると、かつての航空会社の話、コロナ禍で仕事がままならず若手が育っていないこと、かつてヨーロッパに行くのに、アラスカのアンカレッジで給油してから行っていたことなどを、面白く話してくれるのです。話が尽きないので、依頼内容を聞くと、「ずーーん」という音が聞こえそうなほど、落ち込んで「言いたくないけど言わなくてはダメですよね」とおっしゃる。私が「はい。言いたくないことは言わなくていいですよ」と言うと、「わかりました」と話し始めます。
「僕の人生は順風満帆だったんですよ。いい大学を出て、希望していた会社に入って、幼い頃からの夢の仕事をしている。38歳のときに、10歳年下の妻と結婚し、結婚25年の歳月を一緒に過ごしてきた。2人の子宝にも恵まれて、上のお姉ちゃんはアメリカに留学して、現地でバリバリ働いている。下の息子もいい大学を出て、今年から一人暮らしを始めた。元CAの妻も美しく優しく、何の問題もない人生を送っていたんです」
実際に家族の話を聞いていると、絵に描いたような幸せ一家だとわかります。現在、都内の高級住宅街に住んでいますが、それは妻の実家が近いからだとか。パイロットの仕事は留守がちなので、妻の実家に近い方がいいと思ったのだそう。
これは探偵のカンですが、男性側が「理想の家族」という場合、何らかの闇のようなものを内包していることがあります。事実を理想で塗り固めているような……。
「僕も現役を60歳の定年で終えて、この3年間は後進の育成に注力しています。この3年間、妻がよそよそしくなったのです。外出も多く、顔を見ても話もしない。お風呂にも一緒に入ろうとしない。といっても、いやらしい感じではないです。風呂で友達同士が裸の付き合いをする感じなんですが、3年間避けられ続けています」
【妻の行動は、浮気を示す疑惑だらけだった……次のページに続きます】