懐いてくれているのに不安。嫌われたくないから怒れない
付き合って2年ほどで2人は入籍。連くんも美玖さんが母親になったことを喜んでくれたと言います。しかし、連くんからのおねだりは一緒に暮らすようになっても続いていたそう。
「一緒に暮らすようになったときには小学校4年生で、サッカーを学校外で習っているなど忙しくしているようだったのですが、私の晩ご飯の買い物にはほとんどついてきてくれました。私もそれが嬉しくて連くんが好きなものを買い物かごに入れるのを黙認してしまい……。夫からは『買い与えすぎ』と注意を受けていたのですが、どうしても断れませんでした。夫から『ご飯前のお菓子はダメ。もう買わないしおねだりもダメ』と伝えてもらったこともあるのですが、『はいはい』と夫の前では言うものの私と2人のときにはおかまいなし。連くんの中で結婚してからも私は“なんでも買ってくれる同居人”という認識なのかもしれません」
そして、父子のやりとりを見ていると、父親の言うことを無視するなど言うことも聞かない子どものようで、「何が正しい接し方がまったくわからない」状態だと言います。
「夫は甘やかしてはいないのですが、連くんは怖くないとなめているように見えました。それに夫の姉、連くんからすると伯母も何でも買ってあげちゃうタイプ。祖父母も同じみたいです。そうなると、連くんがわがままになってしまっているのは周囲の大人のせいなんですよね、私を含めて……。夫の元妻との離婚は相手側の異性関係だと聞いていて、本当に小さい頃に構ってもらえていなかったようなのです。だから必要以上に構って甘やかしてしまう。無限ループのようです。
実は私はまだ一度も連くんを怒っていません。言うことを聞いてくれないときにはイライラしてしまっていますが、それをなんとか我慢している状態です。連くんは母親(夫の元妻)とは定期的に会っているようなので無理に母親になる必要はないのはわかっていますし、無理になるつもりはありません。ただ、嫌われたくない。それだけです」
相手の連れ子に嫌われたくないという思いから親になりきれずに甘やかしてしまう、怒ることができないという話はよく聞きます。しかし、それでは嫌われはしないものの、いつまでも子どもから見たら遊び相手でしかなく、家族や親として見てもらえません。継母や継父になるには、子どもの成長を傍から見守るのではなく、一緒に成長していく気持ちを持つことが大切です。誰でも初めてのことにはわからないことがほとんど、不安になるのは当然なのですから。
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。