人生100 年と言われる時代、50 歳はちょうど折り返し地点になります。人生の後半をどのように暮らすか。50 歳からの理想の暮らしを実現するためにはお金も必要となります。ファイナンシャルプランナーの坂本綾子さん著『まだ間に合う!50歳からのお金の基本』から50歳からの暮らしに必要なお金についてご紹介します。

1 高度なスキルを身につける

会社員の給与について調べた「賃金構造基本統計調査」によれば、平均的に、年齢が上がるにしたがい給与が増え、50代前半をピークに50代後半には下がります。収入を増やしたいなら、まずは本業の収入アップを目指すのが正論ですが、何の努力もしなければ、増やすどころか50代後半は維持さえ難しいかもしれません。あくまで平均ですから、出世の階段を登りさらに収入を増やせる人もいるでしょう。しかし、役職定年などで収入が減りそうな人はどうすればいいでしょうか?

新聞やテレビで報道されているとおり、日本は少子高齢化により人手不足です。外国人労働者の受け入れも拡大され、高度なスキルをもった人材は高給で優遇される時代が始まっています。社会は大きく変化していますから、何がチャンスになるかわかりません。もう50歳だからなんて思わずに、新しいことにもチャレンジし、自分にできることを少しでも増やしておくことでしょう。

会社員の特典として、雇用保険から教育訓練給付金をもらうことができます。プログラミング、簿記、英語検定、司法書士、介護福祉士、大学・専門学校の職業実践専門課程など、厚生労働大臣が指定した講座を受講すると20%~70%を国が補助してくれる仕組みです。インターネットの「教育訓練給付金制度(検索システム)」で、自分が受けたい講座があるかどうかを確認できます。教育訓練給付金は3年に一度利用できるので、仕事のブラッシュアップや新しいスキルの習得に取り組んでみませんか? これからの仕事に役立つかもしれません。

また、単純ですが、単価が安ければ量を増やしてカバー、年収が増えない、もしくは減るなら働く時間を増やして収入を確保することも有効です。定年以降も継続雇用など何らかの方法で働き続けることです。

自営業者には定年はありません。しかし、仕事を継続していくには、社会の変化に合わせた技術の向上や知識の習得が重要です。会社員のように教育訓練給付金制度は使えませんが、仕事に必要な勉強なら経費で落とせますから、節税にもつながります。

2 副業で稼ぐ

政府の働き方改革により、会社員が副業や兼業をしやすい環境整備が進められています。「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が作成され、モデル就業規則に副業・兼業についての規定が新設されました。
副業をするには、勤務先が認めていることが条件。副業を認める企業はまだ少数派のようですが、今後は解禁するところが増えそうです。

副業の方法としては、

(1)店員など時給や日給のアルバイトをする、
(2)WEBサイトデザインなどの業務を請負う、
(3)自分でネットショップを立ち上げ販売する、

などがあります。確実に月○万円を稼ぎたいのなら、(1)の時給や日給の仕事が向いています。やりがい+お金なら得意分野を活かした(2)の請負や(3)の自分の店などでしょうか。

月に数万円でも、継続的に収入が得られるなら、家計にとっては大きいですね。ただし、過重労働になって体調を崩したり、本業に影響がでたりしないよう注意を。

また、副業収入は課税の対象になります。(1)の時給などの給与収入は年間20万円以上、(2)の請負の報酬や、(3)の個人事業の売上は、収入から経費を差し引いた所得が年間20万円以上なら確定申告が必要です。追加で所得税や住民税を納付することになります。請負の報酬から所得税を源泉徴収されているなら、税金が戻るケースもあります。 

3 50歳からの不動産投資は慎重に

不動産投資で成功している人と話をすると、本当に不動産が好きなのだと感じます。気になる物件があれば、忙しいのに時間を作って見に行くなど、楽しそうです。

不動産投資は、購入時よりも高く売って売却益を得る方法と、人に貸して家賃収入を得る方法があり、個人の場合は家賃収入を得る方法が一般的です。年金では足りない老後の生活費を家賃収入で補えるなどと宣伝する業者もありますが、投資としての難易度は高くなります。

一番大きいのは資金の問題です。親から投資用不動産を相続した、あるいは購入資金が充分あるケース以外は、購入のためにローンを組むことになるからです。ローンを組んで不動産投資を行うと、お金の流れはどうなるでしょうか? 

家賃収入からローンの返済と経費を支払い、残った分が現金収入です。経費は、管理会社への委託料、火災保険料、固定資産税、修繕費など。収支がどれくらいのプラスになるか、事前のシミュレーションは必須です。頭金の額、家賃の設定、入居者が見つからないなどが原因で赤字のリスクもあります。 

不動産投資が、株式などの金融商品の投資と大きく異なるのは税金の扱いです。金融商品は金融商品の利益のみで税金の計算を行う分離課税。一方、不動産投資で得た利益は、給与所得など他の所得と合算する総合課税です。そのため確定申告が必要で、その際の収支計算は、現金の収支とは異なります。

住宅ローンのうち経費にできるのは利子部分のみ、一方、実際には払っていないのに建物の減価償却費を計上できます。総合課税の仕組みを利用して、不動産投資としては赤字でも本業の給与所得の税金を節税することが可能です。ただし、50歳を過ぎて多額のローンを抱えるのはリスクが大きく、節税よりも定期的な現金収入こそが、50歳からの不動産投資の目的としてはふさわしいはず。

ローンを組んでの不動産投資は長期戦なので、数年後も入居者が途絶えない物件を選ぶ力も求められます。自営業者や年金生活者などは、不動産収入で所得が増えれば社会保険料が高くなります。意外と時間も手間もかかります。
これらを総合的に考えて、自分に不動産投資が向いているか、資金面で実現の可能性があるのかをよく検討しましょう。

不動産投資に興味はあるけど、面倒なことが嫌いな人は、不動産投資を金融商品にしたREITを使う方が資金も少なくて済み、現物の不動産につきものの管理の手間も不要です。REITは証券会社を通して株と同様に売買ができ、NISA口座を使えば、利益にかかる税金が非課税になります。

4 自宅をお金に換える

自宅はあるけど、現金が足りないというときに利用できるのが「リバースモーゲージ」です。
自宅を担保に借り入れ枠を設定し、必要なときに必要な分を設定枠の範囲で借りることができます。メリットは自宅に住み続けられること、生きている間は返済不要または利子のみの返済でいいこと。亡くなった後に自宅を売却して返済し、売却益と借入額との差額を相続人が相続します。

いくつかの銀行で取り扱っていて、利用できる年齢は銀行により55歳以上や60 歳以上など。対象となる地域や不動産の条件も銀行により異なります。借りたお金の使い道は、生活費や旅行費用、リフォーム費用、高齢者向け住宅の入居金など通常は自由です(投資を除く)。契約にあたっては、推定相続人の合意や同席が必要です。

貯蓄が思うように進まないときは、自宅がリバースモーゲージの対象になるか、なるなら借入枠はどれくらいか、調べておいてもいいでしょう。一般的には、住宅ローンより金利は高めで変動金利、借入枠は物件価格の5~6割程度です。銀行により、戸建て・マンションいずれも対象、戸建てのみ対象のところがあります。

自治体の社会福祉協議会が行う「不動産担保型生活資金」の貸付もリバースモーゲージの一種です。こちらは低所得世帯が対象です。

満60歳以上の人を対象にリバースモーゲージを住宅ローンにしたのが、リバースモーゲージ型住宅ローン「リ・バース60」です。自宅を担保に借入れ、生きている間は利子の返済のみ、亡くなった後に自宅を売却して返済する仕組みは同じです。借り入れの上限は物件価格の5~6割程度。こちらは借りたお金を生活費に使うことはできず、自宅のリフォームや購入、住宅ローンの借り換え、高齢者向け住宅の入居金などに限定されます。

窓口は取り扱い金融機関で詳細は金融機関により異なります。特徴は金融機関と住宅金融支援機構が住宅融資保険を契約すること、これにより相続発生後は住宅金融支援機構が金融機関に保険金を支払い、住宅金融支援機構は担保物権を売却して資金を回収します。

金利は高くなりますが、万が一、担保物権を売却しても借入金を完済できなかったとき、相続人が残った債務を返済しなくてもよいノンリコース型を選択することもできます。50歳以上60歳未満の人が利用できる「リ・バース50」もあります。融資額の条件は「リ・バース60」と少し異なります。

自宅を持っていると、住み続けたままで、その価値をお金に換えられるわけです。ただし、物件や地価の下落も加味して審査が行われます。

* * *

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坂本綾子(さかもと・あやこ)
ファイナンシャルプランナー(日本FP協会認定CFP(R))
熊本県生まれ。明治大学文学部卒業。20代は貯めては使ってしまう貯蓄リバウンドを繰り返していたが、29歳の時、女性誌の編集長命令で生命保険の記事を担当したことをきっかけに、マネーライターとして生活者向けマネー記事を取材・執筆するようになり、自らも実践。1999年ファイナンシャルプランナー資格を取得。2008年より情報サイト「オールアバウト」マネーガイドとして「預金・貯金」「銀行・郵便局」などの記事を執筆。2010年より独立した立場のFPとして活動を始め、家計相談やセミナー講師も行なっている。著書に「今さら聞けないお金の超基本」(朝日新聞出版)など。


 

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