サラリーマンの場合、税金は給料等から会社によって徴収され、その徴収された税金は、会社が個人に代わって国や市区町村等に納めています。そのため自分が納税しているという感覚があまりなく、節税という言葉も会社や個人事業主のためで、自分には関係ないものと考えている方も多いのではないでしょうか。しかし、サラリーマンにも節税対策はありますし、確定申告で税金が戻ってくることもあります。
そこで今回は、日本クレアス税理士法人の税理士 中川義敬が、長年にわたる税務申告のサポートを通じて得た幅広い知識や経験に基づき、サラリーマン・個人事業主の具体的な節税対策についてお話ししたいと思います。
目次
サラリーマンが納める税金とは?
サラリーマンにおすすめの節税方法とは?
サラリーマンが節税する際の注意点とは?
まとめ
サラリーマンが納める税金とは?
サラリーマンが給与から天引きされる主な税金は所得税(復興所得税含む、以下同じ)と住民税です。
所得税は、その年の1月1日から12月31日の1年間の所得に応じて課税される税金のこと。サラリーマンの場合、毎月給与から天引きされます。このときに天引きされているのは、「給与所得の源泉徴収税額表」により計算した見込みの所得税額になっています。その理由は年間の所得が年の途中ではわからないためです。ですからいったん見込みの所得税額が天引きされ、年間の給与が確定したところで見込みの所得税と実際の所得税額を調整し、徴収や還付が行われる年末調整を行います。
住民税は、都道府県や市区町村に対して収める税金です。所得税と同様にサラリーマンの場合は毎月給与から天引きされます。現在は全国一律で10%(都道府県4% + 市区町村6%)です。ただし、住民税は前年の所得に応じて計算されて課税されます。そのため、例えば、将来退職して収入が無くなった際に住民税の請求がきて困る、という事態を引き起こす場合があります。
サラリーマンにおすすめの節税方法とは?
サラリーマンは年末調整をおこなうことで、年間の納めるべき税金の計算を会社が代行して行ない終了しますので、それ以上の税金計算をする必要はありません。しかし、下記を利用して確定申告を行うことで、節税できることもあります。
ふるさと納税
ふるさと納税は納税という言葉が使われていますが、実際には、都道府県・市区町村への寄附です。生まれ故郷や自分の意思で応援したい自治体に貢献できる制度として創設されました。ふるさと納税では原則として自己負担分の2千円を除いた全額が所得税・住民税の控除の対象になります。また、自治体がその地域の特産品などを返礼品として送ってくれます。返礼品は肉・魚介類・果物等の食品やジュースやお酒等の飲料、工芸品など多岐にわたっています。
全国の自治体の返礼品を知ることができるポータルサイトがいくつかあり、返戻品によってどこの自治体に寄附するか選ぶことが可能です。ただし、控除の対象となる金額に限度があります。それは個人の所得金額や家族構成によって異なりますので注意が必要です。
iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)
iDeCoとは、老後の資金として公的年金以外に給付を受けられる年金制度です。この制度では自分で毎月一定額の掛け金を積み立てて、自分で選んだ運用商品を運用します。その後60歳以降に、運用した結果の金額を受け取ることができます。節税効果としては、掛金全額が所得控除の対象となり、所得税、住民税が軽減されます。将来受け取ることができる年金のための支出が、節税に繋がることでしょう。
また、投資中における節税効果もあります。iDeCoなら運用益に対して非課税となります。最後に受け取る時も年金か一時金で、受取方法を選択することができます。年金として受け取る場合は「公的年金等控除」、一時金の場合は「退職所得控除」の対象となるため、税負担が軽減される場合があります。
注意点として以下のことが挙げられ、加入前には検討が必要です。
・加入期間中は原則としてお金を引き出せないこと
・口座開設や運用のために手数料がかかること
・資産運用なので受取金額が積立金額より少なくなる可能性があること
医療費控除
医療費控除は、1年間に支払った医療費の合計額が、一定額(10万円、又は総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額の5%の金額)を超えた場合に、所得控除を受けられる制度です。医療費の合計額には本人分だけでなく、生計を一にする配偶者やその他の親族分も含めることができます。
医療費とは、下記項目など広い範囲で認められており、詳細は国税庁のHP等でご確認いただけます。
・医師または歯科医師による診療または治療の対価
・妊娠と診断されてからの定期検診や検査などの費用
・あん摩マッサージ指圧師等の施術の対価(治療に直接関係あるものに限ります)
・介護保険等制度で提供された一定の施設/居宅サービスの自己負担額
・医師等による診療や治療を受けるために直接必要な、松葉杖、補聴器、義歯、眼鏡などの購入費用
ただし、注意点が二点あります。
一点目は、控除額に限度(200万円)があること。二点目は、生命保険契約の入院費給付金や健康保険の高額療養費・出産育児一時金などの保険金等で補てんされた部分は、その給付の目的となった医療費の額を限度として、全体の医療費から差し引くことです。
サラリーマンが節税する際の注意点とは?
サラリーマンの大部分の方は、年末調整により所得税等が精算されるため、基本的に確定申告は不要です。しかし、節税のための各種控除を受けるには、確定申告をしなければならないものもあります。サラリーマンで年末調整を行う人は、本業の給与収入以外の給与収入額や、各種の所得金額(一時所得や雑所得等)が20万円以下の場合は、そもそも確定申告の必要はありません。しかし、各種控除を受けるためには、すべて申告が必要になります。
まとめ
今回ご紹介した節税対策は、比較的簡易で、ふるさと納税のように返戻品などを楽しみながら行うもの。あるいはiDeCoのように将来の受け取る年金のための支出や、医療費のように病気の治療のためのやむを得ない支出が節税になるような、広く一般的に利用されるようなものをご紹介しました。
それ以外にもセルフメディケーション税制(特定一般用医薬品等購入費を支払った場合の医療費控除の特例)、雑損控除(災害または盗難もしくは横領によって損害を受けた場合の控除)、投資をされる方にはNISA(運用益の非課税制度)など、節税対策はいくつかあります。気になる方は、是非専門家にお問い合わせください。
構成・編集/松田慶子(京都メディアライン ・https://kyotomedialine.com)
●取材協力/中川 義敬(なかがわ よしたか)
日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士
東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業継承コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業継承」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。
日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)