娘のことを大事に思っているのに、なぜか娘との会話がぎくしゃくしたり、煙たがられたりしている。そんな父親に対して、脳の仕組みをベースにしたコミュニケーション方法を説く、人工知能研究者・黒川伊保子さんの著書『娘のトリセツ』から、娘や家族とのコミュニケーションを円滑にするコツをご紹介します。

文・黒川伊保子

心の対話を始めてみよう

新型コロナウイルスのせいで、家族で過ごす時間が圧倒的に増えた家庭が多い。一緒にいながら、対話のない家族は寂しい。とはいえ、5W1Hを封印されたら、お父さんは、娘に、なんて話しかけたらいいのかわからないのでは?というわけで、心の対話の始め方についてお話ししていきます。

話の呼び水

心の対話は、「相手のことを尋ねる」のではなく「こちらの話」から始める。私は、「話の呼び水」と呼んでいる。井戸の水が上がらないときに、バケツ1杯の水を注いで、「呼び水」をする。あれと同じ。「自分が感じたこと」「自分に起こったこと」をちょっと話す。すると、相手のことばが溢れてくる。それを楽しむのが、コミュニケーションである。

私は、保育園に通っていたころの息子にも、「今日、会社でこんなこと言われてさ。たしかに正論だけど、なんだか、もやもやするのよ」なんていうふうに、自分の身に起きた出来事を「話の呼び水」にして躊躇せずに話しかけていた。「せいろんって何?」と聞かれて、そちらに応えることもあるが、たいていは、小さいながらに頭を絞ってくれる。「おいらも、保育園で、こういうことがあったんだ」なんて。

15 歳の誕生日に、「あなたのそばにもっといればよかった。働くお母さんで、ごめんね」とあやまったとき、息子は優しく微笑んで「次に生まれてくるなら、また働くハハ(彼は私のことをハハと呼ぶ)がいい。一生懸命でカワイイし、何より、外の空気を運んでくれるのがいいよ」と言ってくれた。

「今日何してたの?」「宿題やった?」「明日の用意は?」「プリント出したの?」と尋ねたくなるのを我慢して、「今日ね、赤坂の〇〇で」とか、「ハハがこんなに頑張ったのに、社長がさぁ」なんて、話してきてよかった。

心の対話は、私の日常を臨場感たっぷりに彼に伝え、彼もお返しにいろいろ話してくれたし、励まし合ったりもできた。それは、彼が29歳になった今も続いている。「話の呼び水」を使えば、家族は、きっといつまでも仲良くしていられる。

相手の変化に気づいてことばをかけよう

「話の呼び水」には、3種類ある。「相手の変化に気づいて、ことばにする」「自分に起こった出来事を話す」「相談する」である。なかでも、「相手の変化に気づいて、ことばにする」は、女ごころに響く。

たとえば、この章の冒頭の「妻の新しいスカート」は、この大チャンスだった。夫は、「新しいスカートだよね。いいね(似合うね)(素敵だね)(きれいだね)(かわいいね)」と言えばよかったのだ。

相手の変化点に気づいて、ことばをかける。これには、以下の4つのテクニックがある。

1、褒める

相手のポジティブな変化点を察知したら、「髪型、変えた?」「なんか、嬉しそうだね」「そのスマホケース、カワイイね」などと褒める。

2、気遣う

相手のネガティブな変化点を察知したら、「元気ないね、大丈夫?」「それ、僕がやろうか?」と気遣う。このとき、ポジティブ変化点と違って、「目の下にクマがあるね」「髪がばさばさだね」というような具体的なことは指摘してはいけない。

3、ねぎらう

相手の状況に気づくのも大事だ。寒い中を歩いてきた相手に「寒かったでしょう?」、買い物から帰ってきた妻に「重かったよね」などとねぎらう。

4、感謝する

そして、相手が自分のためにしてくれたことを察知して、ことばにしよう。「あ、僕の好きなナスのカレーだね」「シーツ換えてくれたんだ」「宅配便、受け取ってくれてありがとう」のように。

注意事項が1つだけある。思春期の娘は、父親のことが生理的に気持ち悪いと感じているので(その理由は後に述べる)、「変化点に気づかれるのも、勘弁してほしい」事態なのである。「相手の変化点に気づく」は、11歳ごろまでの娘にはよく効くが、思春期以降は控えたほうがいい。12歳を過ぎたら、「ねぎらう」「感謝する」のテクニックを推奨する。

* * *

『娘のトリセツ』(黒川伊保子・著)
小学館新書 

黒川伊保子
1959年、長野県生まれ。人工知能研究者、脳科学コメンテイター、感性アナリスト、随筆家。奈良女子大学理学部物理学料率業。コンピュータメーカーでAI(人工知能)開発に携わり、脳とことばの研究を始める。1991年に全国の原子力発電所で稼働した、“世界初”と言われた日本語対話型コンピュータを開発。また、AI分析の手法を用いて、世界初の語感分析法である「サブリミナル・インプレッション導出法」を開発し、マーケティングの世界に新境地を開拓した感性分析の第一人者。著書に『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』(講談社)、『コミュニケーション・ストレス 男女のミゾを科学する』(PHP新書)など多数。

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