娘のことを大事に思っているのに、なぜか娘との会話がぎくしゃくしたり、煙たがられたりしている。そんな父親に対して、脳の仕組みをベースにしたコミュニケーション方法を説く、人工知能研究者・黒川伊保子さんの著書『娘のトリセツ』から、娘や家族とのコミュニケーションを円滑にするコツをご紹介します。

文・黒川伊保子

対話には2種類ある

対話には、2種類ある。「心の対話」と「問題解決の対話」である。

「心の対話」は、「気づいたこと(それ、いいね)(カワイイ)」や「感情体験の告白(悲しい、大変、ひどい、嬉しいなど)」から始まり、「共感」で紡いで、「新たな気づき」や「安心感」で着地する。

「問題解決の対話」は、「ゴール設定(どこ、いつ、だれ、なに、なぜ、どのように)」で始まり、「問題点の指摘」をしあって、「解決」で着地する。

When(いつ)、Where(どこ)、Who(だれ)、What(なに)、Why(なぜ)、How(どのように)で始まる5W1H型の質問は、この「問題解決の対話」を誘発するのである。

男性脳は、狩りをしながら進化してきたので、脳が、強いゴール指向に初期設定されている。すなわち、目標に一直線で、感情や「目の前のあれこれ」に気を取られないようにチューニングされている。そうしないと、危ないし成果もあげられないからだ。このため、女性よりもずっと、ゴール指向型の「問題解決の対話」を起動しやすいのである。そのうえ、ゴール指向は、ビジネスの基本。このため、働き盛りの父親たちは、家庭でも、このタイプの対話方式をやめられない。

実は、母親も、子どもにそれをしてしまうことが多い。夫の問題解決型の対話にはかなりムカついているのに、母親は子どもには、それをしてしまうのである。

理由は、日本の子育てが、「ゴール設定」に満ちているからだ。ご飯をさっさと食べさせて、宿題をやらせて、風呂に入れて、翌朝、無事に送り出す……という短期目標。試験に合格させるという中期目標。立派な大人にするという長期目標。いくつもの目標が、私たち母親の前に立ちはだかる。かくして、「宿題やったの?」「学校どう?」「どうして、プリント出さないの!」という、問題解決型の対話だけで、日々が過ぎ去り、いつの間にか息子は大きくなって、家を出てしまう。

これは、実は大問題なのだ。大人になった息子と、楽しい会話ができない。さらに、息子が女性にモテにくい。あなたが、もしも、そういう母親に育てられ、企業人として優秀だとするならば、使える対話モデルが一方に限られている。今さら母親を責めてもしょうがないので、自分で、もう一方の対話モデルを手に入れよう。

この世には、もう一つの対話方式=「心の対話」があるのである。そして、それこそが、娘や妻と、うまく交信するためのプロトコルなのだ。

家族の絆は、心の対話でないと紡げない

「心の対話」は、けっして質問から始めない。女子会で、親しい友人に会ったとき、いきなり「会社、どう? 資格取れたの?」なんて聞いたりしない。「そのスカート、いつ買ったの?」なんて問い詰めたりもしない。

普通は、「そのスカート、素敵!」と声をかける。すると向こうから「ほんと? 嬉しい。先週の日曜日、〇〇で見つけたの。タイムセールで、いきなり3割引きになったから即決しちゃった」と「いつ」「どこ」「なぜ」を一気に答えてくれる。しかも、「〇〇に行ったの?」「そうなのよ〜。それがさ」などと、さらに話が弾むのである。

つまり、「心を通わせるために会った」友人には、いきなり5W1Hの質問なんかしない。なのに、男たちはこれをする。

男たちは何万年も、荒野に出て危険な目に遭いながら、仲間と自分を瞬時に救いつつ、成果を確実に残さなければ、家族を養えず、子孫も残せなかった。となれば、「?」と思ったことは即座に質問し、相手の欠点や「していないこと」を即座に指摘するしかない。けれど、家庭で娘や妻が求めているのは、共感し合うための「心の対話」だ。

もっとも、「マヨネーズはどこ?」とか、「パソコンやスマホは何を買うべき?」「おじいちゃんの法事はどうする?」といった、質問者本人のアクションに直結する話題では、大いに5W1Hを使ってかまわない。

* * *

『娘のトリセツ』(黒川伊保子・著)
小学館新書 

黒川伊保子
1959年、長野県生まれ。人工知能研究者、脳科学コメンテイター、感性アナリスト、随筆家。奈良女子大学理学部物理学料率業。コンピュータメーカーでAI(人工知能)開発に携わり、脳とことばの研究を始める。1991年に全国の原子力発電所で稼働した、“世界初”と言われた日本語対話型コンピュータを開発。また、AI分析の手法を用いて、世界初の語感分析法である「サブリミナル・インプレッション導出法」を開発し、マーケティングの世界に新境地を開拓した感性分析の第一人者。著書に『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』(講談社)、『コミュニケーション・ストレス 男女のミゾを科学する』(PHP新書)など多数。

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