「リタイアしたらゆっくり旅行がしたい」と言ったのは、主人のリタイアではなく“私がリタイアしたら”の話
さとみさんの真意はこうだ。
「たしかに、『リタイアしたらゆっくり旅行がしたい』と言いましたよ。でもそれは“私がリタイアしたら”の話です。今は週3日ですけど、仕事をしていますし、パートとはいえ、そうそう自由に休みが取れるわけではないんです。医療事務の仕事って、頻繁に医療制度が変わるし、現場のシステムもどんどん新しくなっていくので、知識も上書きし続けないといけなくて、私なんてついていくのに必死なんですよ。それに……」
誇りとやりがいをもって医療事務の仕事を続けてきたさとみさん。そんな妻に対し、「大変なら、やめればいいじゃないか」と言った夫の言葉を許しがたいのだそうだ。
「もともと『どうせパートだろう?』という見下した気持ちがあるんですよ。それに、大変そうに見えるのなら、せめて自分のことは自分でやってくれと言いたい。『やめたら?』と言われたとき、『やめたいのは、あんたのお世話のほうだ!』って言ってやりたかったくらいですよ」
さらに、旅行をしたい相手は“女友達”であることを、洋二さんは気付いていない。
「主人と行ったところで、現地集合・現地解散みたいな結果になるのは目に見えていますから。本当に私のためと言うなら、旅行は女友達と行かせてほしいですね。これまでも、友達とは何度か旅行に行きました。でも、主人に遠慮して日帰りか、せいぜい一泊どまり。ちょうど、そろそろ3泊くらいしてもいいんじゃないかって、みんなでLINEで話していたところなんですよ」(さとみさん)
あらためてご主人との旅行について確認してみると、「3年に1回、日帰りで十分です」ときっぱり。言わずもがな、夫婦水入らずの沖縄旅行は当面先延ばしとなった。
取材・文/大津恭子
出版社勤務を経て、フリーエディター&ライターに。健康・医療に関する記事をメインに、ライフスタイルに関する企画の編集・執筆を多く手がける。著書『オランダ式簡素で豊かな生活の極意』ほか。