各種税目の中でも、相続税は特に複雑で難度が高いことで有名です。相続税の難易度が高いのは、相続財産の評価方法が難しいことが理由の一つ。その中でも特に土地は評価が難しいだけでなく、手続き自体も複雑です。

そこで今回は、相続の生前対策を行う日本クレアス税理士法人の税理士 中川義敬が、長年にわたる相続税申告のサポートを通じて得た幅広い知識や経験に基づき、土地を相続する際の手順やその後の留意点についてご説明します。

目次
土地を相続する手順
相続した土地を分割するには
相続した土地を売却したときの税金は?
土地の相続は放棄できるのか
まとめ

土地を相続する手順

土地を相続する場合には、遺言書がなければ土地の分配方法を相続人同士で話し合い、誰の名義にするかを決める必要があります。そして、遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名します。不動産の所有名義を被相続人から相続人へと変えるには、相続登記(相続を原因とする所有権移転登記)をしなければなりません。相続登記は既に義務化されており、ポイントは以下の通りです。

  1. 相続等で不動産を取得することを知った日から、3年以内に手続きを行うこと。
  2. 3年以内に手続きを行わなかった場合、10万円以下の過料の対象となる。
  3. 遺産分割がまとまらず、3年以内に手続きが出来ない場合には、相続人であることを法務局に届出をし、仮登記を行わなければならない。
  4. 3の仮登記を行った後、遺産分割が成立し不動産の所有権が確定した場合には、遺産分割確定日から3年以内に手続きを行わなければならない。

土地の評価額の調べ方は?

相続税法では課税評価額を「時価」とすると定められています。しかし、資産ごとの具体的な評価方法は、法律の解釈に委ねられているのが現状です。そこで国税庁からの法令の補足として、法律解釈を巡って苦慮することの多い不動産と株式を中心に、統一的で具体的な評価方法を周知するものとして「財産評価基本通達」が発せられています。

「財産評価基本通達」では、宅地は「路線価方式」もしくは「倍率方式」で評価します。
・路線価方式:路線価 × 土地の面積(平方メートル)
・倍率方式:固定資産税評価額×倍率

路線価は公式サイト(https://www.rosenka.nta.go.jp/)で公開されており、登記簿に記載された地番・住所に基づいて該当の宅地のマップを開くと掲載されています。

固定資産税評価額は、被相続人が受け取っていた納税通知書あるいは役場発行の証明書で確認が可能です。しかし、土地の形状によって複雑な計算が必要で、できる限り相続に強い税理士などの専門家に相談されることをお勧めします。

名義変更の方法は?

上述した通り、名義変更をするためには相続登記が必要です。相続登記に必要な書類は以下のようなものです。

・土地の相続登記の申請書類
・相続人全員の戸籍謄本、住民票抄本、住民票謄本、印鑑証明書
・被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)
・被相続人の住民票の除票
・固定資産評価証明書
・土地の全部事項証明書

これらを法務局へ提出して名義を変更します。

相続した土地を分割するには

土地の分割には、次のようなものがあります。分割方法別に、その方法を解説した上で問題点を挙げてみましょう。

現物分割

必要に応じて分筆を行い、土地Aは配偶者・土地Bは長男……などのように現物のまま相続する方法です。公平で簡便な分割方法ですが、分筆によって狭小化した土地を持て余す、被相続人が生前に行っていた活用モデルを維持できなくなるなどの問題が生じがちです。

換価分割

まず売却し、その対価を各人の相続割合に従って分割する方法です。単身生活を送る高齢者の住まいや、廃業予定の農地を相続する場合に適しています。一方で、売却にあたっては仲介業者選定から査定・販売広告と複数のプロセスを踏む必要があるため、相続人だけでスムーズに売却手続きを進められるかどうかは不安が残ります。

代償分割

土地を単独承継しようとする相続人が、自身以外の他の相続人に対し、その相続割合相当の金銭を支払う方法です。相続開始後も引き続き居住等の用途で確保する必要のある土地建物に適していますが、納税だけでなく代償分割用のキャッシュを確保しなければならないのが難点です。

相続した土地を売却したときの税金は?

相続不動産の売却代金は、亡くなった人(=被相続人)の代からの所有期間に応じて「長期譲渡所得」もしくは「短期譲渡所得」のいずれかとして扱われます。そして課税譲渡所得に、それぞれの税率が乗じられて税金が計算されます。

・長期譲渡所得(所有期間が5年を超える場合)… 所得税15%+住民税5%
・短期譲渡所得(所有期間が5年以下である場合)… 所得税30%+住民税9%
※所得税に別途復興特別所得税2.1%が加算されます。

【課税譲渡所得金額の計算方法】
譲渡価格 -(取得費+譲渡費用)- 譲渡時の特別控除3,000万円(a)

※取得費とは、売却までの各プロセスでかかったコストを言い、譲渡費用とは、売るために直接かかったコストを言います。

(a)居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除
売主である相続人や被相続人が住んでいた不動産を売却するときは、取得費・譲渡費用のほかに3,000万円の特別控除が認められます。

土地の相続は放棄できるのか

相続放棄とは、自らの意思で相続権を放棄することをいいます。どのような時に相続放棄を行うかというと、主に被相続人に借金などのマイナスの財産がある時です。そこで活用されるのが、相続放棄です。相続放棄を行うと、はじめから相続人とならなかったものとみなされます。

例えば、相続財産が、現金5,000万円、借入金8,000万円の場合、プラスの財産をすべて使っても、マイナスの財産を返済しきれません。このケースで相続放棄を行うと、その相続人は、最初から相続人にならなかったものとされ、現金5,000万円と借入金8,000万円の両方を相続しなかったことになります。注意しなければならないのは、相続人全員が相続放棄した場合には、土地を管理する相続財産管理人の選定が必要なことです。この管理人は、土地の相続を放棄しても管理義務が残ります。

まとめ

今回は、土地について解説をしてまいりました。土地は評価が難しいうえ、相続財産の中でも占める割合が大きいものです。したがって土地の相続がある場合には、その手続きは慎重に行わなければなりません。適切な手続きをするためにも、また、申請に必要な書類を揃えるためにも、ぜひ相続の専門家をご活用ください。

構成・編集/松田慶子(京都メディアライン ・http://kyotomedialine.com

●取材協力/中川 義敬(なかがわ よしたか)

日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士
東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業継承コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業継承」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。

日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com

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