関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、肉親を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。
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庭に撒かれるゴミ、植木に引っかき傷
今回の依頼者は、幸子さん(仮名・65歳)。最近、自宅周辺で不審なことが起こるために、その犯人を突き止めたいと、私たちのところに相談にいらっしゃいました。
「ここ半年ほど、自宅で不思議なことが起こるのです。まず、主人のクルマに引っかき傷がつけられました。そのころから、月に1~2回ゴミが庭に投げ込まれているんです。ゴミの内容はお菓子の空き袋や使用済みマスク、ティッシュペーパーなど。このご時世なので、それを片付けるのも危ないでしょ。いつも消毒液をバンバン掛けながらやっているの」
幸子さんは同じ年の夫と二人暮らし。2人の子どもたちは結婚し、近くに住んでいるそうです。
「子どもたちにはそれぞれの生活があるから、あまり迷惑をかけたくないんですよね。主人に言ったら、“ほっとけばそのうち相手も飽きるだろう。幸子は口が軽いから、どこかで失言して恨みに思われているんじゃないか”って言うんですよ。もう、いやんなっちゃう! 腹が立ちますよね、ホントに」
幸子さんはとにかく明るい女性です。小柄でかわいらしく、一緒にいると明るく楽しい気分になります。60歳まで専業主婦をしていましたが、ここ5年間は近所の介護施設向けの給食会社で調理員のパートをしているそうです。
「定年後に主人がずっと家にいるとお互い息が詰まっちゃうかと思って、私がパートに出ることにしたんです。そしたら主人は“俺は役員だから、定年は70歳だぞ”って笑っているの。あたし、相談したのよ! 先に言ってくれればいいのにね~」
幸子さんの夫は魅力的な人のようで、「ウチの主人は変でしょ~」というノロケ話をユーモアたっぷりにお話になっていて、とても仲がいいご夫婦だと感じました。そして、実際の被害について詳しく聞くことにしたのです。
【子供や孫に犯人の手を伸ばさないために特定したい……次のページに続きます】