関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、肉親を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。
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今回の依頼者は、信夫さん(仮名67歳)。関東近郊にある不動産関連会社に勤務しています。結婚30年、60歳の妻がおかしいと私たちに相談をしてくださいました。
今回の依頼者は、信夫さん(仮名67歳)。関東近郊にある不動産関連会社に勤務しています。結婚30年、60歳の妻が半年前にパートに出てから様子がおかしい、恋人がいるのではないかと、私たちに調査を依頼してくださいました。
【これまでの経緯は前編で】
コーヒースタンドで見た親密な風景
妻は公立学校に給食作って配送する給食センターの調理員として勤務。朝は早く4時に家を出るそう。そこで私たちは3時から自宅前で待機。職場までは自転車で移動するとのことで、目立たないように尾行。
妻は慣れた様子で職場に入り、10時くらいに出てきました。出勤ラッシュが終わった駅の方向に自転車で向かい、駅前のコーヒースタンドでホッと一息。
そこでA5サイズでキャラクターが描かれたやや厚めのノートを開いてペンを走らせています。望遠レンズで撮影し、解析するとそれは妻の日記で、今日の仕事を振り返り、改善点と良かったことを書き出していたのです。
勤務半年でチーフになり、社員としての声がかかる人は、人知れず仕事をブラッシュアップしているのだと感じました。気になったのは「あと134日」とページの下に書いてあったこと。
30分くらい後に、すらりと背が高い50歳くらいの男性が入ってきました。白髪が多いですがオシャレにまとめていて筋肉質でカッコいい。
「あ、いたいた」と陽気に言うと、彼はロイヤルミルクティをカウンターに買いに行き、妻の前に座ります。
「あの話、前向きに考えてくれた?」などと言っていることと、話の内容から給食センターの上司だと拝察。2人は仕事のことを話し合っていましたが、いきなり「ミーちゃん(妻)ここに、ほら、ついてる」と妻の首筋を触ったのです。
妻はピンとこず「何が?」ときょとんとしている。男性は苦笑すると「キスマークだよ」と言い、財布から小さな絆創膏を出して、妻の首筋に貼っていました。調理師の仕事をしているからこそ、絆創膏を持ち歩いているのかな…と思いました。その光景は、愛情にあふれていた。その愛を妻はそれを当然のように受けていて、とても素敵なワンシーンだったのです。
明らかに夫婦ではないけれど、ラブラブしているわけでもない、自然な中年のカップルと言う感じで、「これは相当、付き合いは長いな」と感じました。
それから1時間程度話してから、男性のクルマに乗って移動。郊外にある有名なランチの店に並び、食事をします。男性は「ミーちゃん、ご飯食べ切れる?」などと話しかけ、妻は「ちょっと食べてよ」とご飯を男性の茶碗に入れる。3000円ほどの会計は、男性が支払っていました。
人もまばらな公園を手を繋いで散歩し、その後、彼のクルマの中で2時間過ごしており、浮気の決定的な証拠をつかみます。
【男性は55歳、妻と離婚したばかりだった。次のページに続きます】