関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、肉親を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。
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持ち家があることが、熟年再婚の条件
今回の依頼者は、パート勤務をしている洋子さん(63歳・仮名)です。5年前に前の夫と死別し、2年前に今の夫と再婚。前の夫が亡くなるまでずっと専業主婦をしていたそうです。子供が授からなかったこともあり、死別後は東京・多摩エリアの実家に住んでいました。身長がすらりと高く、とても美しい顔立ちをしており、ネイビーブルーでまとめたシンプルな服装に、ピンクのネイルがとてもキュートでした。
「今回、相談をしたのは、再婚2年目の今の夫(67歳)がおかしいからなんです。夫は、いわゆる“土地持ち”という人で、東京都内にビルを複数持っていて、一族にゆかりがある地方の温泉なども持っています。ちょっと変わった人で見た目もそんなに悪くないのに、女性に嫌われてしまう」
夫は、仕事相手や周囲の人に対しては、先進的で愛想がよく優しい。しかし、家族に対しては冷淡でかなり男尊女卑的な考え方を持っている。
「出会いは熟年向けの結婚相談所です。私は専業主婦だったし、夜には家族が家にいてくれないと、寂しくて不安になることから、結婚したいと思ったんです。親だっていつまでも生きてくれるわけではないですから。私が出した条件は、持ち家があることと、夜は家にいることと、清潔感があること。そして子供がいないこと。おかげさまで私はモテて、いろんな男性と会ったのですが、お会いした方たちは、収入に難点がありました。それを相談所の担当者に言うと、“条件がピッタリないい人がいるんですが、この人、ちょっと癖があるんです”と言われ紹介されたのが、夫だったんです」
夫は自分にクセがあることを知っていて、洋子さんに対して、「俺に口答えをしないでください」「事業に口を出さないでください」と言ってきた。
「そのくらい、別にいいと思ったんです。生活費はたっぷりくれるし、持ち家はある。夫は1回離婚歴があるのですが、前の妻はたいへんに気が強く、なんでも口ごたえをするから離婚したそうです。夫は私の見た目や性格を気に入ってくれて、交際数カ月で入籍。いろいろ相性もよく、幸せだったのですが、結婚して1か月もしないうちに、夫のモラハラっぷりがひどくなってきたのです」
【毎朝6時に炊き立てごはんと一汁三菜を用意する……次のページへ続きます】