関係が近いからこそ、実態が見えなくなる家族の問題。親は高齢化し、子や孫は成長して何らかの闇を抱えていく。愛憎が交差する関係だからこそ、核心が見えない。探偵・山村佳子は「ここ数年、肉親を対象とした調査が激増しています」と語る。この連載では、探偵調査でわかった「家族の真実」について、紹介していく。
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母の口座から100万円がなくなっていた
今回の依頼者は、里美さん(仮名・55歳)です。
「母の口座から、100万円近く引き出されていたので、犯罪に巻き込まれているかもしれません」と真っ青な顔で私たちのカウンセリングルームにいらっしゃいました。
里美さんは、都内の下町で夫とともに惣菜店を営んでいます。お母様は現在85歳で、湘南の高級住宅街にある大きな家で一人暮らし中。ひとりだと危ないので、自分たちの近くに引っ越すように言っても「代々、この土地に住んでいるのに、私が出てしまったらご先祖様に申し訳ない」と言って頑として一人暮らしを続けているとか。
「3年前に、入り婿していた父が亡くなってからは、ホントに元気がなくなってしまって。2人で散歩したりゴルフしたりしていたんですけれど。年齢も年齢だし、認知症も心配。私、母が階段から落ちた夢を見て、夜中に実家にクルマを飛ばしたこともあるんです」
お父様が亡くなってからは、1か月ほど一緒に暮らしていたとのこと。しかし、里美さんのお兄さんが高圧的な人で、お母様と大喧嘩になってしまったのだとか。
「兄は典型的な“昭和の男”で、母に対していつまでもめそめそするな、などと叱り飛ばしたんです。私も疲れていたから、兄に同調してしまった。すると、母はアンタたちのことはもう知らない、と激怒したんです」
それ以降、何事においても里美さんとお兄さんを拒否するようになったそうです。
「母は不動産は持っていますが、現金はあまり持っていません。母の動向が心配になり、母が生活費を引き出している通帳を私が持つようにしたんです。記帳しては、年金が振り込まれているか、生活はきちんとしているかなど、チェックしていました。しかし、2か月ほど前から、30万円、10万円と引き出されて、合計が100万円近くにもなっていたんです」
【交通系ICカードを見ると、同じ場所に何度も行っていた……次ページに続きます】