子どもを妊娠したことで母の本音を聞いた
祖母の葬儀後に残されたのは美穂さんと母親の2人きり。祖母がいた頃から家事をやっていたこともあり、小さい頃のような汚部屋になることはなかったそう。
「もう子どもじゃないと思いつつも、居心地の悪さがずっとありました。かといって、理由もなしに家を出ることはできなかった。母親はというと祖父母の残してくれた家とある程度のお金があったので好きに生きている感じでした。パチンコは若いときよりもしていないようでした。実際に2人きりになっても、もうあのときの何もできない自分ではなく、大人になれたんだなって思うとホッとしました」
母親との2人暮らしが続いていた中で美穂さんは付き合っていた男性の子どもを妊娠、結婚することになります。しかし、母親は結婚も妊娠も大反対! そして娘に言ったとは思えない言葉を吐きました。
「『無計画の子どもは人生を狂わす。本当に相手のことが好きだったら結婚してから子どもを産みなさい』と言ったんです。母親には母性があると思えなかった。だから私のことを娘じゃなくて同居人かお世話をしてくれる人だと思って言ったんでしょう。でも、母の言葉は“私のせいで人生が狂った”と同じ意味ですよね。あぁ、この人に少しでも情を感じて過ごしていた時間がすべて無駄だったと思いました」
そして、母親の意思に反して美穂さんは結婚。旦那さまの仕事で東京に行くことになったと伝えて完全に縁を切ったと言います。
「徐々にフェードアウトしようとしていたら、妊娠中もあってうつ症状が出てしまって。そんな私を見て、夫が母親から離れようと知り合いを頼って都内の会社に転職してくれたのです。自分が子どもを産むこと、育てることに対して母親になりきれないんじゃないのかなって不安だったんですが、夫となら大丈夫だってそのときに思えました。そして今も、幸せです。母親は何の連絡もないのでちゃんと生きて生活をしていると思います。次に会うのは酷いですが、亡くなってからが希望です」
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。