娘は働くことが嫌いだった

離婚されてしまった娘は、実家に出戻ってきた。都内郊外にある築30年の木造住宅は寒く、じめじめしている。

「文句ばかり言ってくるんですよ。娘は働くことが嫌いで、ヨガやダンスに行く以外は、自分の部屋にこもってネットばかり見ている。そして家にお金を入れないのに、お湯をじゃんじゃん流して長風呂をしているんです。娘が出戻ってから、ウチの光熱費は1万円も上がった。夏も節約のためにクーラーをつけないようにしているのに、娘はガンガンつけている」

娘には子供はいない。

「それもアチラの家の問題だったみたいですね。娘は子供を産まなかったので、見た目は30代に見えます。見た目はとてもかわいいですよ。一緒にスーパーに行くと、ナンパもされていますしね」

娘は離婚に当たってそれ相応のお金をもらっていたようだ。

「財産分与で500万円くらいもらっているから働かないのかもしれない。息子が幼い頃、勉強ができない息子に鉄拳制裁をしているとき、当時小6くらいの娘が止めに入ったんです。そのとき主人の手が娘の耳に当たってしまい鼓膜が破れたんです。倒れたときの打ち所が悪くて、鼻を骨折して……慌てて病院に連れて行ったのですが、やはり元通りにはならず、鼻がちょっと歪んでしまっているんです。それを見ると強くも言えないんですよね」

それ以来、娘は父親とほとんど口を利かない。篤子さんとはよく話すという。

「若いのだから仕事をしなさいよと言うと、ネットで稼ぐという。この前、娘が何をしているのかと思って部屋をこっそり見たら、セクシーな下着を着て、ダンスやヨガのポーズをして動画を撮っていたんです。娘は確かにかわいいんです。それを自分でもわかっている。でも、ストリップじゃないんだから……これはショックでした」

娘はユーチューバーになろうとしているのではないか。その動画撮影の様子を聞くと、もっとアンダーグラウンドな動画サービスに投稿するのではないか。それは篤子さん世代からすると“恥”としかいえないようなものだという。

「なんでこんなことになってしまったのかと思います。普通に大学に行って、会社にお勤めして、家庭を持って、子供を育てている人はいっぱいいるじゃないですか」

世間体や他人からの評価で“幸せか・不幸か”、“優秀か・そうではないか”が判断されていた時代は確かにあった。しかし、いつまでも他人の価値観で物事を判断していると、個人の幸せが遠くなっていくのではないだろうか。

「すべては義母のせいですよ。ああいう人に育てられたから、主人はあんなふうになってしまった。義母は資産家ですから、死ねばお金が入ってくるでしょう。それをアテにしているところはありますね。でも、今、ほとんど寝たきりでしょ。長生きなんてするもんじゃないな……と思います」

取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)、『週刊朝日』(朝日新聞出版)などに寄稿している。

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