娘の根深いコンプレックスを何とかしたい

利彦さんは勉強が得意だ。娘のコンプレックスを何とかしたいと思い、“恥を忍んで”摂食障害の家族に悩むフォーラムに参加する。

「内容が壮絶すぎて、気分が悪くなってしまった。ケーキを3ホール食べて吐くとか、弁当を5人前食べるとか、男性にも悩む人が多かった。それと同時に、治らない病気であり、娘世代の場合、原因として親子関係が深くかかわっていることもわかった」

娘の体型は、今も激しく痩せている。以前、利彦さんは、セオリー通りに「マコ(娘)はそのままでいいんだよ。マコはとてもかわいい」と言ったら、「は? キモッ」と言われた。

「ロクに関わってこなかった父親にそんなこと言われても、困惑するだけだとわかっていても、伝えずにはいられなかった。今も娘は、30歳なのに、少女のような体型をしている。成熟した様子は全くない。それに、顔もどんどん変わっていく。ネットで検索すると、娘のような人のことを“醜形恐怖症”とか“整形依存症”と言うらしい。幼いころから美貌の母親と、醜い父親と比べられ、そういう言葉のシャワーを浴び続けたのだから、仕方がないと思いますが」

仕方がないで済まされないのが、金の問題だ。

「今はまだそれなりに金はありますが、私が死んだら、確実に相続税がかかる。今、私は税理士のすすめに従い、金融資産を現金化している。長男が住んでいるマンションは、建てる時にかかった億単位の借金があり、その返済計画と税金対策について、長男夫婦に話した。まだ籍が入ったまま、15年間会っていない妻に対しても対策を講じなければならない。本来なら娘が住んでいる目白のワンルームマンションも売りたい。それなのに対策は進まない」

娘は「いざとなったらお父さんが助けてくれる」と思い込んでいる。

「長男も娘も、金の使い方を知らない。二言目には、“金、金、金……”。長男は遊ぶ金を、娘は美容整形の金を欲しがっている。私はそれなりの企業に勤務して、定年まで勤めあげたのに、現金の手持ちが少ない。それは妻、息子、娘に搾り取られたからです。コロナになって、私は海外旅行に行ったことがないと気が付いたんです。出張で行きます・帰りますという弾丸海外はあっても、ハワイや香港さえも行ったことがない」

しかし、そこに一緒に行く相手もいなければ、その金もない。

「いつ何時、“お父さん、貸して”ってくるかもわからない。娘が結婚してくれればいいんですけどね」

しかし、原形をとどめないくらい整形してしまった。結婚生活に求められるのは、安定や安らぎだ。そのことを娘は気付いていないという。

取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)、『週刊朝日』(朝日新聞出版)などに寄稿している。

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