コロナ禍で2度目の夏を迎えようとしていますが、未だにマスクが手放せない日々が続いています。昨年は記録的な猛暑に加え、外出自粛やマスク着用などの新しい生活スタイルへと変化があり、 「マスク熱中症」などの従来なかった問題が出てきました。この夏も熱中症のリスク増加が予想されます。
そこで、第一三共ヘルスケア株式会社(https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/)は、全国の20代以上の男女500名を対象に「感染症対策と熱中症に関する調査」を行いました。
さらに、今年から始まった新型コロナウイルスワクチン(以下、ワクチン)の集団接種に際して、接種後にも正しい感染症対策を実践できているか、生活者の実態を探りました。
コロナ禍における暑い夏の過ごし方、注意点などをみていきましょう。
■暑い夏もマスクは必要!?
まず、暑いと感じるときでも、 マスクは必要と感じているのかをお聞きしました。
「暑いと感じるときでも、人目が気になってマスクが外せない 」
当てはまる 74.8%
当てはまらない 25.2%
たとえ暑いと感じていたとしても、人目が気になってマスクを外せないという方が7割以上という結果に。
続いて、常に(飲食時は除く)マスクをしていなくてはいけないと思っているかを質問すると
「 常に(飲食時は除く)マスクをしていなくてはいけないと思っている 」
当てはまる 82.6%
当てはまらない 17.4%
これから暑い季節がやってきますが、それでも大半の方は外出時はマスクを外してはいけないと思っていることがわかりました。
■ワクチン接種後のマスクの必要性は !?
ワクチン接種に関するニュースをテレビ等で目にする機会が増えてきました。では、ワクチン接種後のマスク着用の必要性を皆さんはどのように感じているのでしょうか。
ワクチン接種したらマスクは着用しないかを聞いたところ、
「 ワクチンを接種したらマスクは着用しない 」
当てはまらない 91.4%
当てはまる 9.6%
9割以上の方がワクチンを接種した後もマスクを着用することが感染対策のひとつであると理解されていることがわかりました。今後もマスクは必需品といえそうです。
■60代以上は危険?!「暑いと感じるまでエアコンは使わない」が7割
夏の過ごし方について「暑いと感じるまでエアコンは使わない」という方がどれくらいおられるかを年代別に調べてみると
「暑いと感じるまでエアコンは使わない」
20代 73.0%
60代以上 74.0%
世代別にみると60代以上は74.0%と、20代の73.0%とほとんど変わりませんでした。しかし、 60代以上の方は若い世代よりも熱中症のリスクが高いといわれています。
それは加齢に伴い心臓や腎臓の機能が低下していることも多いため、水分の出入りを調節する能力も衰え脱水症状を起こしやすくなるためです。
■医師に聞く「夏の正しいマスクの着用方法と熱中症対策」
夏の熱中症と感染症の適切な対策について、熱中症に詳しい、済生会横浜市東部病院 患者支援センター長/周術期支援センター長/栄養部部長 谷口英喜(たにぐち ひでき)先生にお話を伺いました。
大人も子どももマスクで脱水が進む危険性あり
マスクの着用が日常になった昨今、熱中症のリスクになることにも注意が必要です。人は体から熱を放散するためのさまざまな仕組みを持っています。汗をかくこと、皮膚の血流を上げること、皮膚の血管を拡張することなどです。
そしてもう一つの仕組みが「呼吸」です。犬は汗をかかないので、暑くなると「ハー、ハー」と激しく息を吐いて体温を調整していますが、それと同じです。マスクをすると、通常に比べ呼吸が妨げられ、体熱放散しにくくなります。
例えばマスクを着用して1時間、5kmのジョギングを行った研究では、マスク着用時の運動では心拍数、呼吸数、二酸化炭素が増加し、マスクをつけた部分の皮膚温度は1.76℃上昇していました。
マスクの着用と熱中症の因果関係は定かではありませんが、ある自治体で2020年5〜8月に救急搬送された熱中症患者の約28%は救急隊が現場に到着した際にマスクをつけていた、もしくはマスクを体のそばにおいていました。
マスクをしていると口の渇きを感じにくくなり、水分補給が不十分になり、気づかないうちに脱水が進む危険性もあります。熱中症予防は、以下のポイントに注意する必要があります。
<熱中症予防のポイント>
・屋外で人と十分な距離(少なくとも2m以上)が確保できる場合にはマスクをはずす
・マスク着用時、強い負荷の作業や運動は避ける
・のどが渇いていなくても定期的に(時間を決めて)こまめに水分補給を心がける
・外出時は暑い日や時間帯を避け、涼しい服装を心がける
※周囲の人との距離を十分にとれる場所で、マスクを一時的にはずして休憩することも必要
■水分補給の大切なポイント
▷ 1回に飲む量はコップ1杯(200ml)程度
予防のための水分補給のポイントは、「こまめに少しずつ」とること。目安は、1時間おきにコップ1杯(200ml)程度。運動をするときには、できれば10~20分おきに水分をとるのが望ましいでしょう。
特にマスクをしていると喉の渇きを感じにくいので、自分の感覚をあてにせず、飲む時間を決めてとりましょう。1日に最低でも8回の水分補給の機会を設けましょう。特に、喉の渇きが感じにくい高齢者には、介助者がこまめに少しずつタイミングをみて飲ませることも大切です。
▷ 食事も大切な水分補給
水分補給には、しっかり食事をとることも大切です。一般に、成人では3食とることで食事から約1,100mlの水分をとっています。また、栄養素が体内で代謝される時に水が作られ、その量は約300mlともいわれ、1日の水分摂取の多くを食事が担っているのです。
日常生活で発汗から失われる塩分も、食事でとることができます。一般に日本人の塩分摂取量は多めです。しっかり食事をしていれば塩分補給はできるので、通常の生活をしている場合の水分補給はスポーツドリンクではなく水やお茶などで十分です。
▷ 塩分・糖分の摂りすぎ注意
経口補水液やスポーツドリンクで日常的に水分補給をすると、塩分や糖分を摂りすぎになるかもしれません。特に高齢者や子どもはスポーツドリンクを日常的に飲むと、血糖値が上昇し満腹にもなり、食事をとらなくなることがあります。それでは本末転倒なので注意が必要です。
一方で、運動などで大量に汗をかいたときは、経口補水液やスポーツドリンクが必要です。下着を替えたくなるくらい大量の汗をかいたら、スポーツドリンクや経口補水液のほうが効果的に脱水を予防できます。
▷ 冷たい水分の大量摂取はNG
水分をとる際、冷たい飲み物のほうが体温が下がりそうですが、胃に冷たい水分が大量に入ると、体は消化酵素などが働きやすい温度に戻そうとして体温を上げてしまいます。通常は冷たい飲み物をとり過ぎない方がいいでしょう。
ただし、熱中症や38℃以上の高熱があるときは、体を内と外から冷やします。また、アルコールも利尿効果があり水分を排出してしまうので逆効果です。
<熱中症予防のための水分補給のポイント>
・1回にコップ1杯(200ml)程度
・通常は1時間おき、運動時は10〜20分おき
・冷たすぎない水を(38℃以上の高熱時は除く)
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感染症の対策をしつつ熱中症のリスクを下げるためには、自分自身の感覚に頼ることは危険なのかもしれません。「部屋に温湿度計を置き、確認する習慣をつける」「量がわかるペットボトルで水分を決まった時間にとるようにする」など、今まで以上に“数字”を意識することも必要ではないでしょうか。この夏も工夫しながら健やかに乗り切りましょう。
<調査概要>
・名称:「感染症対策と熱中症に関する調査」
・対象:全国の20代以上の男女500名(20代、30代、40代、50代、60代以上の各年代100名)
・期間:2021年4月2日~4月5日
・方法:インターネット調査