「新しい生活様式」での本格的な夏の到来が間近となり、これまで以上に過酷な夏になることを覚悟しなければならないようです。そうしたことから、一般財団法人 日本気象協会では、熱中症が増えるこれからの時期に備え「熱中症ゼロへ」プロジェクトの推進強化に取り組んでおります。「熱中症ゼロへ」プロジェクトでは、マスクの着用や室内で過ごす時間が長いことを踏まえて、熱中症に注意すべきポイントがどこにあるのか、またどのような対策をとることができるのかを、帝京大学医学部付属病院 高度救命救急センター長 三宅康史先生の監修をもとに「マスク編」「STAY HOME編」として紹介しています。
■マスク着用時に気をつけたいポイント
1:マスクによる放熱の妨げと、呼吸しにくいことによる体温上昇
人は呼吸の際、冷たい空気を体に取り込み、温かい空気を出すことによって体から熱を放出しています。マスクを着用すると、マスクで温められた外気を吸い込むため体が冷やされず、体内に熱がこもる原因の1つとなります。
またマスクによって呼吸することに負担がかかる、つまり運動している時と同じように余分に呼吸をすることで筋肉が使われるため、体温が上がりやすくなります。
<予防・対策のポイント>
お出かけの際は、衣服は通気性の良い生地を選び、下着は吸水性・速乾性に優れた素材を選ぶと良いでしょう。また、冷却グッズなどを用いてしっかりと体を冷やしましょう。
お出かけから戻った際や自宅で過ごす時も、エアコンや扇風機など適切に冷房機器を使用して自分の身の回りの環境を涼しく保ちましょう。
2:水分補給のしにくさ
マスクを着用していると、マスクのつけ外しの煩わしさから、いつもより水分補給をしにくく、水分の摂取量が減ってしまうこともあるかもしれません。
<予防・対策のポイント>
普段よりも意識してこまめな水分補給を心がけましょう。
水分補給と合わせて、大量に汗をかいた際には適度な塩分補給も行い、汗で失われてしまう体内の塩分やミネラルを補いましょう。
■STAY HOMEで気をつけたいポイント
1:体が暑さに慣れていない、「暑熱順化」ができていない
体から熱を放出させるには、上手に汗をかきやすい体の状態をつくることも大切です。
日頃から徐々に体を暑さに慣れさせる「暑熱順化」につとめる必要がありますが、今年は外出の機会が減ったことで「暑熱順化」ができていない体のまま本格的な夏を経験する人が多く、外出時に熱中症リスクの高まりが心配されます。
<予防・対策のポイント>
日頃から適度な運動を行い、体を暑さに慣れさせましょう。運動の際は水分・塩分補給も忘れずに行いましょう。
入浴時はシャワーだけで済ませずに、数日に一度は湯船につかって温まりましょう。入浴後の水分補給と体を冷やすことをも忘れないようにしましょう。
2:筋力低下による脱水
筋肉には水分を備蓄する機能もあるため、筋肉の減少によって体内の水分量が減ってしまう可能性もあります。普段から運動量の少ない高齢者なども注意しましょう。
<予防・対策のポイント>
日頃から適度に運動を行いましょう。運動する際は、温度・湿度など身の回りの環境に気を配り、無理をせずこまめに休憩をはさみましょう。また水分・塩分を適切に摂るようにしましょう。
2020年の夏は、外出機会の減少による「暑熱順化」の遅れや、外出時のマスク着用などにより、例年以上に熱中症への予防・対策が必要です。また人との接触減少によるコミュニケーション不足から、家族や友人同士でお互いの体調を気にかける機会も少なくなりがちです。自分自身でできる対策を日頃から心がけ、近くで過ごす人だけでなく、離れて過ごす人ともコミュニケーションをできるだけ取り、お互いの体調を気にかけるようにしましょう。
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日本気象協会が「熱中症ゼロへ」プロジェクトを発足してから8年を迎えるそうです。しかし、昨年2019年熱中症で救急搬送された人は、全国で累計71,317人に昇り、死者にいたっては216人を数えます。毎年、様々な機関から注意喚起がされているにも関わらず、「熱中症」になる人は後を断ちません。
そうした状況下で、2020年の厳しい夏がやってきます。例年の夏とは違い、新型コロナウイルス感染症から身を守ろうとする行為そのものが、熱中症を誘発するリスクをはらんでいるという、何ともやりきれない、気の重い夏になりそうです。
例年以上に、熱中症の発生に大きな影響を与える気象情報の収集と、熱中症に関する正しい知識の習得、そして対策を講じる必要があるようです。