再会した会社員時代の部下の女性と食事に行くようになり……
それから一年後、一人でいることにも慣れた松木さんは、会社員時代の部下の女性と再会する。
「年末に日比谷で映画を一人で観た後、『松木さん?』と声をかけられたんですよ。彼女は私の5歳下で、第一子の出産を機に会社を辞めていた。今は58歳で、当時の面影がないくらいぽっちゃりしていました。でも、声が明るくて、澄んだ感じはそのまま。私が一人で映画を見ていた理由を聞かれたので、妻が亡くなったことを伝えると、彼女も3年前にご主人を亡くしていた」
彼女とは、伴侶を亡くした悲しみを素直に話し合えた。「ボツイチ同士、仲良くしましょう」と言い、何度か食事に行く。そして、出会いから3か月後に、箱根の温泉旅館で男女の仲になる。
「このトシでラブホテルなんてみっともないからね(笑)。今はまだ付き合ったばかりなんだけれど、毎日が楽しいですよ。先日はウチに来て、妻の仏壇にお線香をあげてくれた。ウチの息子夫婦と、彼女の娘たちとその家族と食事会の話も持ち上がっているんです。古い言葉かもしれないけれど、『フィーリングが合う』っていうのかな。彼女は今度、仕事を手伝ってくれることになりました。私が入籍したいことを伝えると、『遺族年金や義母の介護の問題もあるから』とかわされてしまった。本音を言えば、一緒に住んで、夫婦になりたいんですけれどね」
取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』『不倫女子のリアル』(小学館新書)がある。