母親は妹に付きっきり。父の子育てはお金を渡すことだけで愛情は感じていない
大学合格を機に、母親の興味は妹に移動。その時に感じたのは孤独と嫉妬だったと振り返ります。
「大学合格をとても喜んでくれていたのに、母親の期待に応えたのに、兄妹の中で私が一番母親の言うことを聞いていたのに……、と思いましたね。何がいけなかったのか全然わからなかった。高校の時には勉強内容を伝えるノートなどはなくなっていたけど、学校で何があったかなど聞いてくれる時間があったのに、その時間をすべて妹に奪われました。私の話は聞いてくれるけど、どれも何か作業をしながら。手をとめて目を見てくれることはなくなりました。
当時妹は勉強というよりも絵とか服とかに興味があって、美大対策で絵の教室に通い出していたんです。それも気に食わなかった。私が通わせてもらったのは塾とか学校の勉強に必要なものばかりで趣味を広げてくれるようなことはされた記憶がなかったから。特に何か趣味があったわけじゃないけど、そこを見つけてくれるとか、伸ばしてくれるなんてこと、されたことがなかったのにって」
春美さんが大学に進学した頃には兄はすでに独立。父親は子育てに一切口出しをせずに家にもあまり帰ってこなかったと言い、ほぼ女だけの3人の生活だったそう。
「兄は実家を出たかったのか、わざわざ北海道の大学へ進学して、そのまま北海道で就職。その3年後には結婚して実家にはほぼ寄りつかなくなりました。父親は小さい頃からとにかく仕事人間で、夜遅く帰ってきて会話もないまま朝早くに家を出るような人で。そのおかげなのか、家は母親が専業主婦でも3人とも私大に進んでも大丈夫なぐらいは裕福でした。父親は一応子どもがいることはわかっているのか、誕生日プレゼントとクリスマスプレゼント、そしてお年玉はちゃんと毎年くれていました。でも、何をあげていいのかわからなかったみたいで、小さい頃は母親が用意していて、高校生ぐらいからはお金をくれるようになりましたね。まったく趣味じゃないものであればお金のほうがありがたいですが、本当に不器用というか、お金を出すことで子育てしていると思っていたんだろうなって」
そんな家庭の中で妹との仲は可もなく不可もなく。就職を機に一人暮らしを始めた後は母親との関係は一定に保たれますが、妹のことは離れてからのほうが嫌いなっていきます。
親のお金を食いつぶす妹が許せない。結婚後も、妹と母親にとらわれ、自分たちの関係を子どもたちに重ねるようになってしまい……。【~その2~に続きます。】
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。