みなさん、雨に濡れた革靴をそのまま放置してはいませんか? 乾かしたから大丈夫、なんて大間違い。実は濡れて乾いたあとが、革が最も悪い状態になってしまうとき。油分が抜けてカピカピ・カチンカチンになり、伸縮性がなくなった哀れな革……。そんな革靴は、履き心地が大きく損なわれていて歩きにくいし、なにより〝みっともない〟。快適に歩くためにも、身だしなみにおいて画竜点睛を欠く、なんてことにならないためにも、雨のあとの靴のケアは毎回しっかりと行いましょう。
近頃、靴磨きがブームになっていて、靴愛好家の間では高級靴磨きサービス店が人気になっていたり、数千円もするお手入れセットが多種販売されていたりします。
しかし、ここで目指すのは誰にでも負担なく実行できる簡単かつ十分なお手入れ。早い→作業時間10分、安い→必要な用品代500円未満でできる方法をご紹介します。ナビゲーターは、日本を代表する安売りの街、東京上野のアメヤ横町で靴磨き専門店を営む石塚吉治さん(66歳)。使うのは100円ショップで買ってきた商品のみです。
では、さっそく始めましょう。
[用意するもの]
写真左から靴磨き用ブラシ(豚毛)×2個、靴クリーム、靴磨きクロス。すべて100円ショップで購入。このほかに使い古しのハブラシ1本、ぞうきんを使います。靴クリームは黒い靴には黒を、茶色などほかの色の靴には「クリア」を使います。「クリア」も100円ショップで売っています。
ポイントは靴磨き用のブラシを2本用意すること。作業によって使い分けるので、ブラシの背の部分に「1」「2」と番号を書いておくと便利です。
作業1:靴を乾かす
新聞紙を靴の中に詰め込んでよく乾かします。新聞紙がしめってくるたびに2~3回、新聞紙を交換すると早く乾きます。
新聞紙を詰めるときに大切なのは、靴のしわを伸ばすようにしっかりと詰めること。上の写真左が新聞紙を詰めた靴、右が詰めていない靴です。新聞紙を詰めずにそのまま乾かすと、右の靴のようにつま先が反ってしまうので、つま先部分が伸びるように詰め込んでください。
作業2:靴全体にブラシをかける
靴がしっかり乾いたら、いよいよ靴磨きです。新聞紙を靴に詰めたまま作業します。
「ブラシ1」を使って、靴についたホコリを落とします。このとき、ブラシは軽く当てるだけ、ゴシゴシこすってはいけません。靴磨きの作業はこのあとの工程もすべて「軽く・丁寧に」が基本です。
※「靴全体」と書いていますが、靴底は除きます。以下も同様。
作業3:ぞうきん(ウエス)でふく
固く絞ったぞうきんで、靴全体を軽くふきます。
作業4:靴クリームを塗る
使い古しのハブラシで靴全体にクリームをまんべんなく塗ります。
このときのポイントは、ハブラシでとるクリームをほんの少量にすること。毛先をクリームにちょっと当てるくらいで十分です。クリームを塗った部分は少しツヤが落ちるので、塗れているかどうかわかるはずです。
クリームをつけすぎると革がベタつき、このあとブラシをかけてもツヤが出づらくなり、またホコリがつきやすくなります。
作業5:「ブラシ2」で余分なクリームを取り除く
作業2で使ったのとは違うブラシ=「ブラシ2」を使います。ブラシのかけ方は作業2と同じです。
このブラッシングで余分なクリームをとりながら、クリームを靴全体にならします。このときも「軽く・丁寧に」を忘れずに。
作業6:「ブラシ1」をかけてツヤを出す
ブラシのかけ方は作業2と同じです。「ブラシ1」でさらに磨くことで、どんどん革にツヤが出てきます。
ここであらためてブラシの使い分けを整理します。
ブラシ1:ホコリをはらう、ツヤを出す
ブラシ2:余分なクリームをとり、全体にならす
※ブラシ2の毛先にはクリームがついてしまうので、そのほかの作業には使いません。
作業7:靴磨きクロスでさらにツヤを出す。
この作業でも「軽く・丁寧に」を忘れずに。
以上で作業終了です。
下写真の左側が磨いた靴、右側が磨いていない靴。ツヤの違いは一目瞭然です。
慣れてくると、一足10分程度でできるようになります。
通常の手入れもこれと同じやり方でバッチリです。また、新聞紙はいつも靴に入れっぱなしにしておくのがオススメ。つま先が反ってくるのを防いでくれます。
よく「靴はどのくらいの頻度で磨いたほうがいいの?」と質問を受けますが、靴の手入れは「気になったときがやりどき」です。汚れてきたかな、革がくたびれてきたな、と思ったら10分、ささっと作業してください。手をかけた分だけ靴はツヤを増し、あなたの気分も、歩く快適さも高めてくれるはずです。
取材協力/靴磨き専門店石塚・石塚吉治