茶の湯の精神を体現する茶道具を、千利休を祖とする千家とともに400年に渡り作り続けてきた十の職家を「千家十職(せんけじゅっしょく)」。この「千家十職」の茶道具約250点を展覧する『茶の湯の継承 千家十職の軌跡展』が8月31日(水)から9月12日(月)まで日本橋三越本店 新館7階ギャラリーで開催されています(展覧会についてはこちら)。

開催に先立ち、本展覧会を監修した東京国立博物館名誉会員の林屋晴三さんから挨拶がありました。

「この展覧会は過去に例のない内容の濃いものになっています。十職の方々が本当に力を入れて下さったこと、その思いを受けて千家さんたちがご家蔵の良いものをたくさん出して下さったことで、この展覧会は並みでは出来ない素晴らしいものになっています。

私も実際拝見しまして、自分の認識を改めるような新しい発見がいくつもあり、この展覧会を機にご来場の皆さんも、この展覧会を見ることで千家と職方の関わりについて深くご理解いただくことが出来ると思います。

また十職が中核をなして、千家とともに400年歩んできたので、こうした歴史がきちっと残ったのだなということを認識していただけたらと思っています」

東京国立博物館名誉会員の林屋晴三さん

東京国立博物館名誉会員の林屋晴三さん

また職家を代表して永樂家 十七代 永樂善五郎さんが挨拶をしました。

「(十職のなかには)侘茶の祖である利休さんの当時からのお付き合いになる家もありますし、江戸中期になってからお付き合いが出来た家もあります。

ただ単にお茶の道具を作るのではなしに、私が思いますには、その当時当時のお茶のお家元、つまり宗匠のお茶への哲学を具現化していくのが職方の務めであり、それを今日まで延々と続けてきたわけです。

こういう風にある特定のお家の、ある特定の目的のために、特定の集団があるというのは非常に珍しく、それが綿々と何百年と続いています。そしてこれからも茶の湯という日本独特の文化がある限りは、職家がお手伝いしていくことを我々の正念とさせていただきます。

これからもがんばって努力していきます。この度は誠に立派な展覧会を開催していただき、ありがとうございます」

永樂家 十七代 永樂善五郎さん

永樂家 十七代 永樂善五郎さん

さらに日本橋三越本店長 中 陽次さんは次のようなコメントをしています。

「この展覧会は、千家の皆様、職家の皆様、そして林屋先生、共催の読売新聞社様など、本当に多くの方のご協力とご尽力によって開催に漕ぎ着けることができました。

当店は、来年から数年かけて開店以来の大改装を計画しています。そのビジョンが『日本文化の精神で、世界を幸せにしよう』という大それたものです。そのためにお店をますます“日本文化を売る店”にしていこうと、われわれは計画しながら行動しています。『茶の湯の継承 千家十職の軌跡展』は、その象徴といえるものです。

茶の湯というのは、どこを切っても日本文化そのもので、伝統を敬いつつ、日本文化に新たな刺激を与え続けてきてくれた存在です。また、もてなしの精神や、和の精神というものの創造のエンジンだったのではないかと考えています。茶道具は、その結晶です。本展覧会では、それをなんとか表現したいと考えてきました。

三越は100年近く、茶道具を含めて、茶の湯の世界とお付き合いさせていただいて来ましたが、それでもこれほどの展覧会をするには、知識見識ともに浅薄の域を脱せずということで、三千家および各職家の革新と創造の歴史を的確に伝えるような名器の選択と編集ができるように、企画準備の段階から林屋先生に監修していただき、職家の方々も含んだ実行委員会の皆様に、ご尽力いただきました。

構想は5年前くらいからあったのですが、この展示会の実行計画に入ってからは1年半という大変短い時間のなかで集中的にご努力をいただきました。その苦労の分だけ、これまでになかった千家十職の世界が表現できたのではないかと思っています。感無量です」

日本橋三越本店長 中 陽次さん

日本橋三越本店長 中 陽次さん

会場入り口では、堀内仙鶴筆「利休居士画像」が迎えてくれます。堀内仙鶴は、表千家の茶家である堀内家の初代で、俳人としても知られるが、画技にも秀でていました。

入るとすぐに『黒楽茶碗 銘禿』など、いわゆる「利休道具」(利休が所持した・作った・作らせた道具)が並び、見る人を圧倒的な世界に惹き込みます。

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約250点の茶道具は、「利休とその時代」、「少庵・千家再興の時代」、「元伯宗旦の時代」、「江戸初期 茶の湯の広がり」、「三千家の時代の始まり」、「利休百年忌の時代」、「千家の再興」、「紀州家と表千家」、「幕末・維新の時代」、「千家と女性茶人の時代」、「現代の家元と千家十職」と分類し、展示されています。

数多くの茶道具が、時代が変遷するなかで、茶の湯の精神の伝統を守りながらも、新しい挑戦をしてきた様子を私たちに語りかけてきます。

黒田家の柄杓、利休判の形柄杓のケースを見る永樂家 十七代 永樂善五郎さん(左)、東京国立博物館名誉会員の林屋晴三さん(中)、日本橋三越本店長 中 陽次さん(右)。柄杓は本来、その御家元ごとに定まった形があり、炉、風炉の違いを含めると、その数は約120種類にもなるといわれる。

黒田家の柄杓、利休判の形柄杓のケースを見る永樂家 十七代 永樂善五郎さん(左)、東京国立博物館名誉会員の林屋晴三さん(中)、日本橋三越本店長 中 陽次さん(右)。柄杓は本来、その御家元ごとに定まった形があり、炉、風炉の違いを含めると、その数は約120種類にもなるといわれる。

8月31(水)には、日本橋三越本店6階の三越劇場で、「千家十職の温故知新 ~千家十職の未来を担う若手職家~」と題した特別対談が行なわれました。

司会を務めた林屋晴三さんは冒頭で、「これほどの展覧会は、私の約60年の学芸員生活のなかで初めてで、おそらく十職さんたちも、こういう展覧会が行なわれるとは想像しなかったでしょう」と展覧会について触れ、三千家と職方の関わりなどについての解説がありました。

その後、登壇者の土田家当代・土田半四郎さん、奥村家当代・奥村吉兵衛さん、永楽家次代・永樂陽一さん、樂家次代・樂 篤人さんが、それぞれの職家の由来、作品作りへの思いなどを語ってくれました。

開催期間中は、千家十職当代の新作を披露する「千家十職 新作展 -伝承の美の世界-」(会場は日本橋三越本店の本館6階美術特選画廊・最終日は17時開場)を同時開催しているほか、三千家によるお茶席(日時・会場は下記参照)、茶の湯に関連する売り場や展示が設けられています。

これを機会に日本文化の源泉とも言うべき茶の湯の世界を、日本橋三越本店で体験してみてはいかがでしょう。

『茶の湯の継承 千家十職の軌跡展』
■会期/8月31日(水)~9月12日(月)
■時間/10時30分~19時(閉場は19時30分)※最終日は16時まで(閉場は16時30分)
■会場/日本橋三越本店 新館7階ギャラリー
■入場料/一般・大学生800円、高校生・中学生600円(小学生以下無料)
■主催/茶の湯の継承千家十職の軌跡展実行委員会、日本橋三越本店
■共催/読売新聞社
■特別協力/表千家不審菴、裏千家今日庵、武者小路千家官休庵
■監修/林屋晴三(東京国立博物館名誉会員)
■お問い合わせ:03-3241-3311(大代表)

「三千家によるお茶席」
■表千家不審菴:8月31日(水)、9月1日(木)
■裏千家今日庵:9月2日(金)、3日(土)
■武者小路千家官休庵:9月4日(日)、5日(月)
※各日ともに11時~16時。会場は本館7階催物会場。お茶券代1001円(和菓子付)

文/編集部

 

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